2024年05月01日
新茶の季節となりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。
今回は、終章「成果を上げる能力を習得せよ」の最後の部分を読んでみます。
エグゼクティブの成果をあげる能力によってのみ、現代社会は二つのニーズ、すなわち個人からの貢献を得るという組織のニーズと、自らの目的の達成のための道具として組織を使うという個人のニーズを調和させることができる。したがってまさにエグゼクティブは成果をあげる能力を修得しなければならない。
P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 終章 p227より引用
組織と個人にそれぞれのニーズがあります。
組織のニーズ :働く人に力を発揮してもらい、組織に貢献してほしい。
個人のニーズ :自らの幸福のため、自己実現のために組織を使いたい。
この二つのニーズを調和させるのは、エグゼクティブの成果をあげる能力です。
働く人はエグゼクティブとして、その能力を発揮して組織に貢献するとともに、組織を道具として、自己実現を図ります。
組織は、所属する個人に能力を発揮してもらって、成果を上げ、組織の目的を果たします。
働く人も、組織も、矛盾なく、それぞれ大きなプラスの成果物を手にすることができるのです。
これこそがマネジメントの正統性でもあります。
働く人が成果をあげる能力を修練していないと、この構造は成り立ちません。
ここに、成果をあげる能力をどうしても修得せねばならない理由があります。
『経営者の条件』の終章は次の文章で締めくくられています。
"Effectiveness must be learned."
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
米津仁志 at 16:14
| ささやタイムズ記事 | ドラッカー
2024年04月02日
ようやく信州も春らしくなってまいりました。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。今回は、終章からご紹介します。
組織は優秀な人がいるから成果をあげられるのではない。組織の水準や習慣や気風によって自己開発を動機づけるから、優秀な人たちをもつことになる。そして、そのような組織の水準や文化や気風は、一人ひとりの人が自ら成果をあげるエグゼクティブとなるべく、目的意識をもって体系的に、かつ焦点を絞って自己訓練に努めるからこそ生まれる。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』 p223より引用
いまは大変な人手不足で、当社も大変困っておりますが、優秀な人材がほしい、というのは身勝手な話だと思っています。
組織の水準、習慣、気風をつくることによって「自分を改革して成長していきたい」と考える自尊心の高い人材を組織内で育てることが先なのです。
どんなに素晴らしい人材が入ってこようとも、暗い沈んだ雰囲気の組織では、がっかりして辞めていってしまうでしょう。
私も、社内から次のトップを担う人材が出てほしい、と思います。
そのために、社員たちには学ぶ材料や場を提供しています。
知識、技能、経験などは仕事に欠くべからざるものですが、それらよりも、もっと大切なことは、仕事を通じて人格を上げていくことだ、という価値観を社内で共有しています。
二面性のある人、利己的な人、うそをつく人、他人を蹴落とそうとする人などは、とりあえずは隠しおおせたとしても、どこかでつまづく、と思っています。少々鈍重でも、誠実にまじめに仕事をしている人は必ず浮き上がってくると信じています。
私は、どんな困難が降りかかってこようと、決してあきらめない明るい前向きな態度で対応し、ついてきてくれている社員やパートナーに恩返しをしていきたいと思っています。
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
米津仁志 at 15:16
| ささやタイムズ記事 | ドラッカー
2024年03月12日
春になっても雪がちらつく信州です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。今回は、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)から「意思決定」について読んでみます。
大統領が手に入れられる唯一の情報たる報告書なるものはまったく助けにならない。これに対し、あらゆる国の軍が、命令を出した将校が自ら出かけ、確かめなければならないことを知っている。少なくとも副官を派遣する。命令を受けた当の部下からの報告を当てにしない。信用しないということではない。コミュニケーションが当てにならないことを知っているだけである。
大隊長自らが隊員食堂に出かけていって隊員用の食事を試食するのもこのためである。メニューを見て料理を運ばせることはできる。だがそうはしない。自ら隊員食堂に出かけ兵隊たちと同じ鍋からとる。
コンピュータの到来とともに、このことはますます重要になる。決定を行う者が行動の現場から遠く隔てられるからである。自ら出かけ、自ら現場を見ることを当然のこととしないかぎり、ますます現実から遊離する。コンピュータが扱うことのできるものは抽象である。抽象化されたものが信頼できるのは、それが具体的な事実によって確認されたときだけである。それがなければ抽象は人を間違った方向へ導く。
自ら出かけ確かめることは、決定の前提となっていたものが有効か、それとも陳腐化しており決定そのものを再検討する必要があるかどうかを知るための、唯一ではなくとも最善の方法である。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』 p188より引用
ドラッカーの予想の通り、コンピュータはますます経営に入りこみ、いまでは経営に必要不可欠なものになっています。『経営者の条件』は1967年の著作ですが、当時のほとんどの人にとって、この文章の意味は理解できなかったのではないでしょうか。
いま、コンピュータのデータはいろいろな示唆を与えてくれますが、データだけで判断することは、間違いを導くかもしれません。データによって出来上がった抽象を、具体的な事実によって確認する必要があるのです。
「おかしいな・・・よし、現場に見に行こう!」という感じです。
コンピュータの出現が、意思決定に対する関心に火をつけることになった理由は多い。しかしそれはコンピュータが意思決定を乗っ取るからではない。コンピュータが計算を乗っ取ることによって、組織の末端の人間までがエグゼクティブとなり、成果をあげる決定を行わなければならなくなるからである。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p216より引用
データが身近になったために、誰でも意思決定ができるようになりました。意思決定ができるということは、誰でもエグゼクティブになれるということです。
毎日、大量のデータが吐き出されていますが、うまく活用されていません。チャットGTPは誰でも使えるようになりましたが、どれだけの人が成果を上げる使い方をしているでしょうか。
データの海で船をうまく操縦できていないように思います。
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
米津仁志 at 13:20
| ささやタイムズ記事 | ドラッカー
2024年02月09日
暦の上では春となりましたが、まだ寒い日が続いております。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。今回は、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)から「集中」について読んでみます。
集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を問うことである。答えが無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。もはや生産的でなくなった過去のもののために資源を投じてはならない。第一級の資源、特に人の強みという稀少な資源を昨日の活動から引き揚げ、明日の機会に充てなければならない。
つまるところ、成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。肥満防止のためである。組織は油断するとすぐ体型を崩し、しまりをなくし、扱いがたいものとなる。人からなる組織も、生物の組織と同じようにスマートかつ筋肉質であり続けなければならない。
古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。アイデアが不足している組織はない。創造力が問題なのではない。せっかくのよいアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。みなが昨日の仕事に忙しい。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p142-146より抽出、編集して引用
「体系的廃棄」という言葉を耳にしたことのある方も多いかと存じます。ドラッカーの言葉としてあまりにも有名です。
集中するためには、まず不要なものを廃棄をすることが先だということです。
ビジネスにおいては、何もしなくても、次々に新しい仕事がやってきますが、逆に、古い活動を見直したり、廃棄のための検討をしたりするような機会はありません。
一般的には、優先順位を考えろ、と言われますが、何が劣後であるかを考え、劣後のものを廃棄するというのが体系的廃棄の手順です。
当社も創業以来、組織の成果に寄与しない事業を捨てて、事業を転換してきました。昭和までは人口増加とGDPの増加というベースがありましたので、なんとかうまく転換することができてきました。
「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか?」という言葉がいつも私の耳に響いています。
いまもまさに、コロナ禍によって立ち行かなくなった事業は廃棄し、新しい事業に挑戦しています。しかし、昭和時代とは経済のベースが違いますので、簡単ではありません。
地方の生活関連サービス系の事業は大きな引き潮の上にいます。いままで通りというわけにはいかないと思っております。
次回は「意思決定」を読んでみます。
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
米津仁志 at 10:12
| ささやタイムズ記事 | ドラッカー
2024年01月09日
能登半島地震で被災された方、関係者のみなさまに心よりお見舞いを申し上げます。
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、前回は、ドラッカーの『経営者の条件』より、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)のうち「貢献」のなかの「三つの領域における成果」についてご紹介しました。今回は「強み」について読んでみます。
成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない。結果を生むには利用できるかぎりの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを動員しなければならない。強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。
鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑銘に刻ませた「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る」との言葉ほど大きな自慢はない。これほど成果をあげるための優れた処方はない。カーネギーの部下たちは、それぞれの分野において優秀だった。それは彼が部下の強みを見出し仕事に適用させたからだった。もちろん、最も大きな成果をあげたのはカーネギーだった。
強みを生かすことは、行動であるだけでなく姿勢でもある。しかしその姿勢は行動によって変えることができる。同僚、部下、上司について、「できないことは何か」でなく「できることは何か」を考えるようにするならば、強みを探し、それを使うという姿勢を身につけることができる。やがて自らについても同じ姿勢を身につけることができる。
成果に関わるすべてのことについて、機会を育て、問題を立ち枯れにしなければならない。特にこのことは人事についていえる。自らを含め、あらゆる人を機会として見なければならない。強みのみが成果を生む。弱みはたかだか頭痛を生むくらいのものである。しかも弱みをなくしたからといって何も生まれはしない。弱みをなくすことにエネルギーを注ぐのではなく、強みを生かすことにエネルギーを費やさなくてはならない。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p102-135より抽出、編集して引用
どなたにもそれぞれの特徴として、強みや弱みがあります。一人で仕事をする場合は、強みを使えるはよいとしても、弱みも如実に表れてしまいます。
しかし、組織には個人の弱みを消し、強みをより強く生かす機能があります。
例えば、数字に強い人は経理を担当し、交渉力があり親しみやすい人は営業を担当し、手先が器用な人は製造を担当します。
このように、組織は分業をすることによって、各人の強みを生かすことが出来るのです。
カーネギーの墓碑銘が示す通り、カーネギーは人の強みを利用して大きな成果を上げました。それぞれの人の強みを生かすことで、企業はより大きな成果を上げることが出来るようになるのです。
弱みにエネルギーを注ぐことは無駄な努力です。弱みで仕事をしなくてはならない場合は、最低限すべき(しなくてはならない)ルールを決めて、それをしっかり行ってもらうのがせいぜいか、と思います。
今年一年のみなさまのご多幸、ご健勝を祈念いたします。
いつもご利用ありがとうございます。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
米津仁志 at 10:52
| ささやタイムズ記事 | ドラッカー