従業員満足と動機づけ
佐藤等さんの『実践するドラッカー[チーム編]』より引用いたします。
ドラッカー教授は「満足とは動機づけとしては間違っている。満足とは受け身の気持ちである」と指摘しています。従業員満足を測ることに意味はあるとしても、不満と満足の入り混じった結果が出るのみで、人間の根本に根ざす動機づけとは程遠いものに感じられます。
『実践するドラッカー[チーム編]』より引用
従業員満足が仕事の動機づけになるのではない、というわけです。
このことに関して、佐藤さんは次のドラッカーの文章を引用されています。
今日、従業員満足が関心を集めている理由は、産業社会において、もはや恐怖が動機づけとなりえなくなったからである。しかし、従業員満足に関心を移すことは、動機づけとしての恐怖が消滅したことによってもたらされた問題に正面から取り組まず、横に逃げているに過ぎない。
『現代の経営』・・・p.161
ひどいことですが、昔は恐怖を動機づけにしていれば、ビジネスを維持することができたのです。いまや、当然ですが、恐怖だけでビジネスを支配することは難しくなりました。
かといって従業員満足を満たせばよいかといえば、それだけでは動機づけにはならないでしょう。
数年前にある会社を見学させて頂いたことがありました。
その会社に入るといきなりど~んと巨大なワインセラーがおいてありました。地下には従業員の福利厚生のためにプールバーがあり、本物のバーテンダーがいました。社員は無料か、もしくはそんなにお金がかからずに、ワインやお酒が飲めるということでした。
出張は一般社員でもグリーン車を使うことができて、宿泊はリッツカールトンなどの超一流ホテルに泊まっていいのだ、とおっしゃっていました。
社員に持って歩いてもらうために、イギリスの有名な会社に高級なオリジナル傘を注文したのだ、というお話も伺いました。
規模の割に就職活動中の学生から大変人気があった企業です。
その社長は大変ユニークな考え方をされていたので私は熱心に学びました。それはそれで大変勉強になりました。
最近、その会社は名前が変わった・・・・・・という風の便りを聞きました。
見学をさせてもらい、うらやましく感じながらも、こんなことが続けられるのだろうか、社員の満足ってそうやって解決するものなのだろうか、と思ったのを覚えています。
ドラッカーは、経営者が従業員満足といって喜んでいるのは、横に逃げているだけだ、というのです。
社員から好かれる簡単な方法に逃げてはいけないのだ、と気がつかされます。
参考文献:
『実践するドラッカー[チーム編]』 佐藤等(編著) 上田惇生(監修) (ダイヤモンド社)
『ドラッカー名著集3 現代の経営[下]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
参考ブログ:
『実践するドラッカー」[思考編]』を読んで
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e935306.html
ドラッカーの「卓越性」
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e936292.html
人を変えること
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e938327.html
仕事を任せるときには
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e954882.html
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