平成24年 新年のご挨拶
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は格別なご高配を賜り、誠にありがたく厚く御礼を申し上げます。被災されましたみなさまおよびご関係のみなさまには旧年中のご心労を心からお慰め申し上げます。
本年もより一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。
東日本大震災をはじめとして、さまざまなことが起こった平成23年は一生忘れない年となりました。
震災の復興、放射能汚染、円高、外国人の日本離れ、TPP、財政赤字問題、公共投資問題、タイの洪水など、我が国はいまだに未解決の問題を山のように抱えています。
稲盛和夫さんは、西郷隆盛の『南州翁遺訓』を解説したご著書『人生の王道』の中で、「遺訓第二条」を引合いに出して、次のように述べています。
新しい日本を建設しようというそのときに、明確な国家像、ビジョンというものが描かれていなかった。目指すべき大計がないままに、いくら優秀な官僚を集めても国がよい方向に進むはずがない。西郷はそう嘆いたのです。
求められているのは、半年や一年という短期間の時間軸ではなく、「国家一〇〇年の大計」、日本というこの国を一つの時代にあたり、どういう方向へ進めていくのかという明確な方向性です。すべての施策は、そのような確固たる目的や目標があってこそ、そこに向かって収斂していきます。大計なく、思いつきでいかにも対症療法的な施策を打っていると、国の将来は危うい、といっているのです。
『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』より引用
明治維新の頃に西郷隆盛が残した言葉を稲盛さんが解説してくださっている文章です。
私は、震災後に書かれた文章ではないか?と錯覚してしまいました。奥付にははっきりと2007年9月に発行と書いてあります。
明治維新、敗戦に次ぐ大きな曲がり角に直面しているいま、政治はポピュリズムに翻弄され、目先の利益ばかりを見て、変革を拒んでいるかのようです。
稲盛さんは、これからの日本に求められているのは「足るを知る」という生き方であり、豊かになった経済力を生かして、他の国々に対して「徳」をもって報いることができる「富国有徳」の国を目指すべきだ、と述べています。
日本が国家として善き行いに努めるならば、それはさまざまな外交懸案の解決の一助となり、日本に必ずや恩恵をもたらすに違いないと思うのです。
『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』より引用
私にできることといえば、西郷隆盛も稲盛さんも使われている「敬天愛人」の精神で生きることです。
「敬天愛人」とは天を敬い、人を愛すること、稲盛さんの言葉をお借りすれば、人間として正しいことを貫くこと、己の欲や私心をなくし、人を思いやる「利他」の心をもって生きること、を意味します。(「敬天愛人」は京セラの社是になっているそうです。)
みなさまの新年のご多幸を心よりご祈念申し上げます。
日ごろのご愛顧に衷心より感謝をいたします。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
参考文献:『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』 稲盛和夫 (日経BP)
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