5つの行動規範
暑中お見舞い申し上げます。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。
今回は「第13章 組織の文化」の「五つの行動規範」の節をご紹介します。
優れた組織の文化が存在するならば、投入した労力の総和を超えるものが生み出される。力の創造がなされる。これは機械的な手段では実現できないことである。機械的な手段では、理論的にもせいぜい力を保存するだけである。力を創造することはできない。投入したものを超える価値を生み出すことは、人が関わる領域においてのみ可能である。
したがって、優れた文化を実現するために必要とされるものは行動規範である。強みの重視であり、真摯さの重視である。正義の観念と行動基準の高さである。
『現代の経営(上)』 p201より引用
優れた組織では投入した労力の総和を超えるものが生み出されるのです。
1+1<2ということです。
1+1=2であるならば、一人一人がそれぞれに仕事をしていることと同じで、組織で仕事をする意味がありません。
このように、組織の優れた文化を実現するものが行動規範です。
ドラッカーは5つの行動規範を挙げています。
正しい組織の文化を確立するには、行動規範として次の五つが求められる。
(1)優れた仕事を求めること。劣った仕事や平凡な仕事を認めないこと。
(2)仕事それ自体が働きがいのあるものであること。昇進のための階段ではないこと。
(3)昇進は合理的かつ公正であること。
(4)個人に関わる重要な決定については、それを行う者の権限を明記した基準が存在すること。上訴の道があること。
(5)人事においては、真摯さを絶対の条件とすること。かつそれはすでに身につけているベきものであって、後日身につければよいというものではないことを明確にすること。
『現代の経営(上)』 p203より引用
ドラッカーでは「真摯さ:integrity」という言葉がよく出てくるのですが、この(5)にも登場しています。「真摯さ」は、後からとってつけることができない素質だということです。
この部分の原文を載せておきます。
1. There must be high performance requirements; no condoning of poor or mediocre performance; and rewards must be based on performance.
2. Each management job must be a rewarding job in itself rather than just a step in the promotion ladder.
3. There must be a rational and just promotion system.
4. Management needs a “charter” spelling out clearly who has the power to make life-and-death decisions affecting a manager; and there should be some way for a manager to appeal to a higher court.
5. In its appointments management must demonstrate that it realizes that integrity is the one absolute requirement of a manager, the one quality that he has to bring with him and cannot be expected to acquire later on.
‘’The Practice of Management” Peter F. Drucker Harper Collins e-books
「真摯さ」については、以下のように表現されています。5.の後半です。
the one quality that he has to bring with him and cannot be expected to acquire later on
翻訳通りですね。真摯さは、その人物がそもそも持っていなくてはならない素質で、後から獲得することを期待できない素質です。
「真摯さ」とは何を意味するのか、ということについては、ドラッカリアンの間では、いつもいつも話題になります。
この話題だけで、どれだけ飲んできたことでしょうか。
私は、そもそも持っていなくてはならない、とドラッカーがはっきり書いているのですから、誠実さ、高潔さなど人格、人間性に関わる素質を指していると思っています。
実行力のようなものは、社会人になってから学んで身に付けることができるからです。
素晴らしい成績を上げる人であっても、自己中心的であったり、社会的な行動に問題があったりする一面があるならば、その人を選ぶべきではないということです。
そのような人物は、しばらくは組織に貢献するかもしれませんが、それは表面的な現象であって、長期的には組織に大きなマイナスの影響を及ぼします。
人格や人間性は子どもの頃からだんだんと形成されてくるもので、部長になってからとってつけることはできない、と思っています。
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
ちなみにどういう人を採用してはいけないか(EVILEな人)について、以下の書籍が参考になります。ご一読ください。
『人を選ぶ技術』 小野壮彦 (フォレスト出版)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BMK7JRR9/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
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