共通性のない多角化の場合

Hitoshi Yonezu

2010年12月14日 10:00

 企業買収による多角化では、事業間に共通性あるいは類似性がなければならない。市場の共通性、あるいは技術の共通性が必要である。業務プロセスの共通性であってもよい。それらの共通性なくして、多角化とくに企業買収による多角化が成功することはない。所有による支配では不十分である。
    
           『ドラッカー365の金言』12月14日の節より引用

 
 シャンパン、ファッション、腕時計、香水、靴などの高級品の製造販売で有名なフランス企業があります。ばらばらのように見える商品構成でも、実はすべての商品が、有用性以外の価値で売れるものである、という共通性があることを、ドラッカーは指摘しています。

 今から二十、三十年ほど前まで、特にバブル経済の頃は、多角化も一つの手法とされ、大企業が力まかせに、いきなり新分野へ進出していくという手法がありました。
 
 最近の買収では何らかの共通性、類似性をもった買収がほとんどで、いきなり新分野への多角化という手法はあまり耳にしません。
 
 その分野に精通した適切な人材を採用できた場合、事業に共通性や類似性がなくても、子会社や事業部をつくって、そこから新分野に進出するという手法はまだよくあるようです。
 
 しかし、人材に頼る経営は、不安定です。いくら素晴らしい企業で高い地位に就いていたとしても、その人材が転職する可能性もあり、そうなったら事業は存続しえないからです。
 また、ずっといてくれたとしても、その人材の立場が強くなりすぎて、抑制が効かなくなる恐れがあります。

 優れた人材とともに、経営者が事業の形をつくってこそ、ようやく新分野進出が安定してくるのではないかと思います。
  
  

 参考文献:『ドラッカー 365の金言』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

 
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