暑中お伺い申し上げます。
皆さまいかがお過ごしでございましょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
小惑星探査機「はやぶさ」が、2003年の打ち上げから七年の歳月を経て、2010年6月13日、地球に戻ってきました。本体は大気圏で燃え尽きましたが、分離されたカプセルはパラシュートで無事にオーストラリアに着地したそうです。
誰もいない、音もない宇宙を、七年間にわたって60億キロメートルも飛んでいた姿を想うと、とても感動しました。はやぶさを設計し、運航させていた日本の宇宙航空研究開発機構のみなさまは素晴らしいですね。
日本人として自信がつき、やる気が出てくるニュースでした。
故障があったとはいえ、歳をとることのない「はやぶさ」ですが、その七年間に私は七歳、着実に歳をとっていました。
あれだけの快挙を成し遂げたのに歳をとらなかったはやぶさと比べると、歳をとった自分に哀愁を感じてしまうのですが、いまのところ、老けてしまったという実感はありませんし、現実として老いの不安があるというわけではありません。
しかし、やがて私も寄る年波を感じるときがやってくるでしょう。
老いとはどのようなものなのか・・・いまはまだ考えることが出来なくて、はやぶさの飛んでいた宇宙のような、つかみどころのない真っ暗な世界を想像してしまいます。
『白い犬とワルツを』は、80歳を越えてから長年連れ添った妻を亡くしたサムが、余生を一人で強く生きていこうとする姿を描いた翻訳小説です。日本では無名の作家でしたが、ある書店のPOPをきっかけとしてミリオンセラーになった本です。映画にもなりました。
ちょっといたずら心があり、頑固な性格のサムは、子供たちには内緒で、おんぼろトラックに乗り、歩行器を使って、一人で遠くの町の想い出の場所へ出かけてゆきます。傍らにはいつも白い野良犬がついています。
老人の視点から書かれている小説ですから、余りにもスローなテンポです。若者が読んだら、イライラしてしまうかもしれません。
歳をとれば、動作も頭の回転も遅くなりますが、基本的な考え方は若者のときとと、そうそう変わりません。
我々ははやぶさのように不死身ではありません。いまの状態が永遠に続くと思ったら余りにも身の程知らずです。
老いた自分はどう考え、どう行動するのか、この本を読んで少しだけ想像することができました。
みなさまのご多幸をお祈り申し上げます。どうぞ楽しい夏をお過ごしくださいませ。今月もよろしくお願い申し上げます。
参考文献:『白い犬とワルツを』 テリー・ケイ (新潮文庫)