クールビズと衣更え

米津仁志

2010年06月10日 10:00

 越後屋にきぬさく音や衣更           其角


 大酒遊興して馴染みの遊女のもとに一泊した朝帰り、たまたま通りかかった駿河町の越後屋の前で「きぬさく音」を聞き、いささか重たくなった酒びたりの生活とも別れて、新しい生活に衣更えしたいものだ、と裏を読めば、一句の趣は格段に深くなる。(『百人一句』より引用)




 久しぶりにに営業にこられた大手銀行の行員の方が、

 「すみません、6月からクールビズなので、ネクタイなしで失礼いたします」

 と言った。ジャケットに白いシャツを着て、襟元はすかすかとしている。
 

 数年前にクールビズが盛り上がった時から、6月にクールビズの服装にできることを楽しみにしていた。

 その後、どうもその普及が完全ではなかったので、いまではネクタイを外すことを何となく躊躇してしまっている。

 お客さまがネクタイをしておられるのなら、私もしなくては、と思ってしまう。

 ハワイのアロハシャツのように、正装として認められていれば、話は早いのに。

 スーツからアロハに衣替えするのなら、私も其角の感じたように「生活を変えるぞ」と思えるかもしれない。

 遊女のもとに一泊なんて、粋なことはしていませんがね・・・

 

 参考文献:『百人一句』 高橋睦郎 (中公新書)
 

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