蜂の怒り
木ばさみの白刃(しらは)に蜂のいかりかな 白雄
庭の花木を切ろうとしてか、木鋏を動かすとその白刃の反射する陽光に射られて、花にいた蜂が怒りの表情を見せて飛ぶ、という。(『百人一句』より引用)
加舎白雄は上田藩松平家の家臣、加舎忠兵衛吉亨の次男として江戸深川の藩邸に生まれた。二十歳代半ばで俳諧を知り、烏明に師事したが、その才能は師を越えていたといわれ、烏明派に対抗して自門の経営に努め、その弟子は4000人を数えたという。
ここ上田市では、芭蕉よりも、蕪村よりも親しまれている俳人だ。
前に、地元の商工会で街路樹の蜂の巣の駆除をしたときのことだ。
蜂の巣に殺虫剤をスプレーすると、蜂がブーンと大きな羽音を立てて、我々に向かってきた。かなり怒っているようだった。
白雄は花の木を切ろうとしたわけだが、江戸時代も今も、蜂が怒るのはそう変わるものではないのだ。
話が少々汚くなってしまうが、私の家の部屋に入り込んできた蠅も、蚊も、叩こうとすると、蜂と同じように、まるでターボを効かせたかのように、ブォーンと向かってくる。
たしかに怒っている。白雄は面白いことに気がついたものだ。
参考文献:『百人一句』 高橋睦郎 (中公新書)
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