職務設計の間違い6つ
春の温かさが待ち遠しい今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、このブログでは『マネジメント』の中巻を読んでいます。
前回は、マネジメントに不可欠であり、後天的に備えることが出来ない資質として「真摯さ」についてご紹介しました。本日は続きの部分、マネジメントの仕事を設計する際の「職務設計の間違い」の6項目について、重要な部分を抽出してご紹介します。
以下は引用です。
(1)第一に、最も一般的な間違いは、仕事を狭く設計し、人が仕事で成長することを妨げることである。マネジメントの仕事は、その職にあるかぎり、学び、育つことのできるものにしなければならない。大きく設計した仕事が害をなすことはない。たとえ害があっても、直ちに直すことができる。ところが、小さく設計した仕事は、人と組織を知らぬ間に麻痺させる。
(2)マネジメントの働きを妨げる間違いの第二に、仕事とはいえない仕事、つまり補佐の仕事がある。マネジメントの仕事には目的、目標、役割がなければならない。明確な貢献ができるものでなければならない。責任ある存在となれなければならない。 ところが、補佐の役には直接貢献できることがない。自分だけでは責任ある存在とはなりえない。自身の目的、目標、役割がない。
(3)間違いの第三は、マネジメントが自分の仕事をもたないことである。マネジメントとは仕事である。しかしそれは、マネジメントがすべての時間を費やすほど時間を要する仕事ではない。マネジメントの人間の仕事は、マネジメントの仕事と自分の仕事の二つからなる。マネジメントの人間とは、マネジメント兼専門家である。 したがって、自分の仕事がなければならない。十分な仕事がないとき、マネジメントの人間は部下の仕事をとってしまう。
(4)第四に、マネジメントの仕事は、一人あるいはその直接の部下を使うだけでなしうるものにしなくてはならない。会議や調整を常に必要とする仕事は間違いである。最初から人間関係を織り込むことは無用としなければならない。
(5)第五に、報奨の不足を肩書で補ってはならない。もちろん、仕事の中身の不足を肩書で補ってはならない。採用すべき原則は、優れた仕事ぶりには報酬を与えることとし、肩書は仕事、地位、責任が変わったときにのみ変えることとすべきである。
(6)第六に、「後家づくり」の仕事は再考して廃止しなければならない。今日では、優秀な者が連続して失敗する仕事が「後家づくり」である。理屈ではよくできた仕事に見える。しかし、実績のある者が二人続けて失敗したならば、そのような仕事は廃止し、仕事の内容を再構成しなければならない。
『マネジメント(中)』第32章「マネジメントの仕事の設計」
p33-41より抽出して引用
これらはマネジャーの仕事を設計する際に気をつけなくてはならないことを6項目にまとめたものです。一つずつ見ていきます。
(1)マネジャーの仕事を小さく設計すると、仕事を軽々とこなしてしまい、マネジャーはそれ以上成長することができません。仕事を大きく設計することの害はありませんが、小さく設計すると人と組織を麻痺させてしまいます。
(2)マネジャーに補佐の仕事をさせることは避けなければなりません。補佐の仕事は、マネジャーには小さすぎます。責任がないために、貢献もはっきりしません。
(3)マネジメントは仕事ですが、フルタイムの仕事ではありません。例えば1000人が働く巨大工場であるならば、工場長はマネジメントだけに専念する必要があるでしょう。しかし、一般のマネジャーがマネジメントの仕事だけに専念するということはありません。マネジャーは自分の専門の仕事を抱えながら、マネジメントをすることになります。
(4)マネジメントの仕事は自分一人で完結できるものか、せいぜい一人の部下を使って出来るものでなければなりません。マネジャーなのに、一人で決められず、常に会議を開く必要があったり、多くの同僚の援助が必要だったりしたら、マネジャーの地位である意味がありません。
(5)報奨が少ないから、肩書をつけてあげようというのは、経営者の都合であります。優れた仕事をする人の報奨は上げなくてはなりません。肩書で埋め合わせすることは出来ないのです。
(6)「後家づくりの仕事」とは、ドラッカーらしい面白い表現ですね。原書でもその言葉通り“widow-makers”と表現されています。(1)とは逆の意味ですが、誰もできないような仕事があるとしたら、それは仕事の設計が間違っています。それを部下にやらせるのはあまりにも無責任です。
マネジメントの仕事の設計と言いますと、難しい感じがしますが、以上のことに気を付けて考えていきます。このように、原則が頭に入っていると、間違った判断はしなくなるでしょう。
ドラッカーは細かいところまでよく見ているな、と感心します。
この冬は本当に寒い日が続きます。1月には会社の水道も凍結してしまったほどです。どうぞご自愛くださいませ。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
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