2022年12月01日 10:00
マネジメントの仕事には基本的なものが五つある。それら五つの仕事が相まって、活力にあふれた成長する組織を生み出す。
(1)目標を設定することである。すなわち、目標をもつべき領域を定め、そのそれぞれについて到達地点を決める。そのために行うべきことを決める。連携する人たちとのコミュニケーションによって、それらの目標を意味あるものにする。
(2)組織することである。すなわち、活動、決定、関係を分析し、仕事を分類する。分類した仕事を活動に分割し、作業に分割する。それらの活動と作業を組織構造にまとめる。それらの活動とそれぞれの部門のマネジメントを行うべき者を選ぶ。
(3)チームをつくることである。すなわち、動機づけを行い、コミュニケーションを図る。組織においてこれを行う。人との関係においてこれを行う。昇給、配置、昇進などの人事においてこれを行う。部下、上司、同僚とのコミュニケーションによってこれを行う。
(4)評価をすることである。すなわち評価のための尺度を定める。評価測定の尺度ほど、組織全体と一人ひとりの成果にとって重要な要因はない。部下の全員が組織全体の成果と自らの成果について評価の尺度をもつようにする。彼らの成果を分析し、評価する。尺度の意味と成果を部下と上司、同僚に知らせる。
(5)自らを含めて人材を育成することである。
これら五つの仕事は、さらに細分化することができる。その細分化した仕事の一つひとつについて一冊の本を書けるとさえいってよい。
そのうえ、これら五つの仕事に必要とされる能力が多様である。
例えば目標を設定するには、バランスの能力を必要とする。自らの信条の実現と事業上の成果とのバランス、将来のニーズと眼前のニーズとのバランス、入手可能な手段と期待する結果とのバランスである。明らかに、目標の設定には分析と統合の能力を必要とする。
組織するには分析の能力を必要とする。稀少な資源を最も経済的に使用しなければならない。それと同時に、人を扱うがゆえに、正義の原則のもとにあって終始真摯たるべきことが要求される。人材の育成にも、分析の能力と真摯さが要求される。
動機づけとコミュニケーションを行うには、対人能力を必要とする。分析よりも統合の能力が要求される。公正さが主であって、経済性は二の次である。ここでも、分析的な能力よりも真摯さのほうがはるかに重要である。
評価をするには、分析の能力を必要とする。評価とは上からの管理ではなく、自己管理を可能にするためのものである。この大原則を破っていることが、マネジメントの仕事のうち評価測定が最も貧弱な分野になっている原因である。上からの管理手段としているかぎり、評価はマネジメントにとって不毛な分野であり続ける。
目標設定、組織、動機づけとコミュニケーション、評価、人材開発は、マネジメントの仕事のいわば形式的な分類である。しかしこれらの分類は、あらゆるマネジメントとその活動に適用することができる。
『マネジメント(中)』第31章「マネジメントの仕事」p26-28より引用