体系的廃棄とは?
上田城の桜も週末には見ごろとなりそうです。す。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
前回のブログからドラッカーの『マネジメント(上)』の「目的とミッション」を読んでいます。ここに「体系的廃棄」という概念が出てきます。どのような意味でしょうか?「体系的廃棄」について、ドラッカーの著作からいくつかの文章をご紹介します。
新事業への参入の開始と同じように重要なこととして、事業の目的とミッションに合わなくなったもの、顧客に満足を与えなくなったもの、業績に貢献しなくなったものの体系的な廃棄がある。
『マネジメント(上)』第7章「目的とミッション」p121-122より引用
集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を問うことである。答えが無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。もはや生産的でなくなった過去のもののために資源を投じてはならない。第一級の資源、特に人の強みという稀少な資源を昨日の活動から引き揚げ、明日の機会に充てなければならない。
『経営者の条件』 p142より引用
つまるところ、成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。肥満防止のためである。組織は油断するとすぐ体型を崩し、しまりをなくし、扱いがたいものとなる。人からなる組織も、生物の組織と同じようにスマートかつ筋肉質であり続けなければならない。
『経営者の条件』 p145より引用
古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。アイデアが不足している組織はない。創造力が問題なのではない。せっかくのよいアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。みなが昨日の仕事に忙しい。
『経営者の条件』 p146より引用
「体系的廃棄」はドラッカーの言葉として有名です。かっこいい言葉である反面、意味が分かりづらいです。
原書を読むと「体系的廃棄」を意味する"systematic abandonment"という言葉も出てきますが、節の題名は「体系的廃棄」(the need for planned abandonment)でありまして、その” planned abandonment"の方がドラッカーの意図するところではないか、と私は思いました。
であるならば「体系的廃棄」ではなく「計画的廃棄」としてもよいわけです。また、事業については、廃棄という言葉がそぐわないなら、撤退と置き換えて「計画的撤退」としてもよいと思います。
一般的に、新しい事業を検討する際には計画的、体系的に考えますが、廃棄または撤退することについては、あらかじめ計画をもつことはありません。困りに困ってようやく撤退というケースもあると思います。
ドラッカーは廃棄、撤退も体系的、計画的に行うべきであると言います。廃棄、撤退を実行しない限り、新しい事業に移ることが出来ませんし、組織の足を引っ張る事業が亡霊のようにいつまでも残ってしまう事になります。「○○になったら、撤退する」「売上○○円に到達しなければ撤退する」というような条件を予めて決めておくということです。
そういう私もコロナ禍で複数の店舗を閉店し撤退しております。いま考えると、コロナ禍になる前に、撤退すべき案件でありました。これからも「撤退するか?それとも続けるか?」という事態に直面するでしょうが、「まだやっていなかったとして、今これに手をつけるか?」という問いかけを自分にしたいと思います。
地震、戦争などが終息し、世界に平和が訪れますことを祈念しております。今月もよろしくお願いいたします。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
『マネジメント(上)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
"Management Tasks,Responsibilities,Practices" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
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