組織の文化

Hitoshi Yonezu

2020年12月01日 10:00

 師走を迎え、ますますお忙しくお過ごしのことと存じます。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、ドラッカーの『現代の経営(上)』「第10章 フォード物語」の「経営管理者をマネジメントすることの意味」を読んでいます。その最終部分です。

 ここでは、経営管理者(=マネジャー)のマネジメントにおいて必要とされるものとして以下の6項目が挙げられています。

 1.目標と自己管理によるマネジメント
 2.経営管理者の仕事を適切に組織すること
 3.組織に正しい文化を生み出すこと
 4.CEOと取締役会(統治のための機関)
 5.明日の経営者の育成
 6.経営管理者の健全なる組織構造

 これらの項目はとり立てて行うことではなく、あらゆる企業において既に行われていることです。選択肢は、正しく行うか、間違って行うか、のいずれかであり、それが企業の盛衰を決める、と述べられています。
 
 この6つの中で私が重要だと感じましたのは3番の「組織の文化」です。その部分を引用します。

 経営管理者はそれぞれが別の人間でありながら、働くときはチームとして働く。そしてチームとして組織された集団は、組織としての文化をもつことになる。この組織としての文化は、一人ひとりの人、一人ひとりのものの見方、それぞれの仕事の仕方、それぞれの姿勢、それぞれの行動パターンからなる。しかし組織に特有の文化は、組織の全員に共有されるものとなる。
 組織の文化は、それを最初に形成した人たちがいなくなったはるか後においても生き続ける。それは、新しく入ってくる者の姿勢と行動を規定する。組織の中で成功する者を決める。組織が卓越性として認め報いるべきものを決める。また凡庸として無視すべきものを決める。さらに組織内の人間が成長するか、いじけるかを左右する。健全に育つか、育ち損なうかを左右する。組織の卑しい文化は卑しい経営管理者をつくり、偉大な文化は偉大な経営管理者をつくる。

               『現代の経営(上)』 p164より引用

 
 この部分を原書で見てみましょう。

 Though managers are individuals, they have to work together in a team, and such an organized group always has a distinct character. Though made by individuals, their vision, their practices, their attitudes, and behavior, this character is a common character.
 It survives long after the men are gone who originally created it. It molds the behavior and attitudes of newcomers. It decides largely who will succeed in the organization. It determines whether the organization will recognize and reward excellence or scuttle into the shallow harbor of placid mediocrity. Indeed, it controls whether men will grow or become stunted, whether they will stand straight and erect or become crooked and misshapen. A mean spirit in the organization will produce mean managers, a great spirit great managers.
     
       "The Practice of Management" Peter.F.Drucker


 最後の行にありますmeanには、形容詞として「卑劣な、下品な、さもしい」という意味があるそうです。始めの行でcharacter(=性格、気質)が「文化」と訳されています。「組織の文化」は社風のようなものと考えていいと思います。それと区別して、最終行のspiritは「精神」でもいいのかもしれません。組織のもつ卑劣な精神は卑劣なマネジャーをつくり、偉大な精神は偉大なマネジャーをつくる、ということになります。

 組織の文化は組織全員に共有されます。卑劣な文化はマネジャーが代々受け継いでいってしまうのです。企業をよくするためには、正しい文化の醸成が絶対に必要であるわけです。
 以前、社内問題が起こった際に、良くないことをしているにも関わらず「昔からそういうやり方だから」という答えがありました。私自身が把握していなかったところで文化になってしまったことに悲しい気持ちを覚えましたし、自分の力不足が従業員に迷惑をかけているということを大変申し訳なく思いました。

 いつもご利用ありがとうございます。どうぞ良いお年をお迎えください。みなさまのご多幸、ご繁栄を祈念しております。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books


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