従業員はロボットではない
春は名のみで寒さは一層つのるばかりです。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、各地に出張していますと、ときには対応の悪いお店に当たることがあります。地理的に分断され独自の経済圏を持っていた地域は、競合が少ないせいなのか、売る側の立場が強い傾向があります。
先日、ある地方で、お客さまと連れ立って有名な和菓子屋さんの喫茶に入ったときのことです。和服姿の中年女性が対応する高級なお店です。入口の立て看板に表示されていた抹茶と和菓子のセットを注文したところ、ショーケースに並んでいる和菓子を選べないという対応に遭遇しました。色とりどりに並んだ和菓子を見たから食べたいと思ったのです。別料金でよいので、とお願いしても「こちらで選ばせていただきます」との返答でした。
従業員はロボットではないのです。いや、AIのディープラーニングが効いてくれば、むしろロボットのほうがサービスがよい、と言われるようになるかもしれません。
ドラッカーは『現代の経営』で次のように述べています。
人の成長ないし発展とは、何に対して貢献するかを人が自ら決められるようになることである。しかし我々は、通常、一般従業員を経営管理者と区別し、彼らを自分や他の人の仕事についての決定に責任もなければ関与もせず、指示されたとおりに働く者として定義する。ということは、一般従業員を物的資源と同じように見、企業への寄与に関しても機械的な法則の下にあるものと考えていることを意味する。これは重大な誤りである。
しかし、この誤りは、従業員の仕事の定義に原因があるのではない。むしろ、従業員の行うことの多くがマネジメント的な要素を含み、うまくマネジメントするならば、きわめて生産的な仕事にすることができるという事実を見逃しているところに原因がある。
P.F.ドラッカー 『現代の経営[上]』 p16
企業が長い歴史と伝統を持っていることは、それだけでその企業の大きな財産です。しかし、その財産に胡坐をかいていたのでは、お客さまから見放されることになってしまいます。ドラッカー的にいうならば、マネジメントされていないということです。この従業員が悪いのではなく、マネジメントしない会社がいけないのです。
従業員の給与支払も、今日の食材購入も、こうやって私が文章を書いていられるのも、すべてはお客さまが当社を使ってくださっているから出来ることです。当社においてもお客さまのご要望を見失ってしまうことのないよう、自らへの戒めといたします。
いつもご利用ありがとうございます。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
関連記事