不可能な仕事

Hitoshi Yonezu

2018年07月02日 10:00

 暑中お見舞い申し上げます。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、ドラッカーの『マネジメント』には「後家づくりの仕事」という言葉がでてきます。穏やかではないですね。私もこの言葉を初めて目にした時にはびっくりしました。いったい何を意味しているのでしょうか?(ドラッカーからの引用ですので、失礼な表現をお許しください。)

 帆船全盛の頃、いずれの船会社にも「後家づくり」と呼ばれる船が現れたものである。「後家づくり」とは、なぜか死亡事故を起こす船に付けられる名である。船主たちは、そのような船は思い切って解体した。そうしないことには、船長や航海士のほうが辞めていってしまった。
 今日では、優秀な者が連続して失敗する仕事が「後家づくり」である。理屈ではよくできた仕事に見える。しかし、実績のある者が二人続けて失敗したならば、そのような仕事は廃止し、仕事の内容を再構成しなければならない。あとになってみれば、どこが悪かったかも明らかになる。

              『マネジメント(中)』 p40より引用


 「後家づくりの仕事」とは、普通の人にとって不可能な仕事のことを指しているのです。
 

 通常、「後家づくり」は偶然生まれる。それは、たまたま一人の人間のなかにはなかなか見られない二つの資質を併せもつ者が、うまくこなしてしまったために生まれる。当然のことと思われていた仕事が、属人的な偶然の産物だった。それでは同一の資質の者を探すことは不可能である。

              『マネジメント(中)』 p41より引用


 特別な能力をもつ人でなければうまくこなすことができない仕事があったとしたら、できなかった人の責任ではなく、その仕事を設計した人の責任です。マネジメントは特殊な能力をもつ人によって構成されるものではありません。凡人をして非凡な成果を上げさせるのがマネジメントです。不可能な仕事は分解、分析し、再統合しなくてはなりません。

 当社にも、誰が後を継いでもうまくいかない仕事がときどき出てきます。そのときは「誰かできる人はいないのか?」と考えてしまうことがあります。しかし、変えるべきは人ではなく、仕事の設計なのかもしれません。気合の入った上司が、自分ならできるのに・・・と言ってしまっては、いつまでも解決できません。仕事を客観的に見る態度が必要です。

 いつも当社をご利用いただき、ありがとうございます。今月もご指導のほどよろしくお願いいたします。時節柄お身体ご自愛くださいませ。

 参考文献:『マネジメント 課題、責任、実践(中)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 


  


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