AI化と人間の情

Hitoshi Yonezu

2017年05月01日 10:00

 行く春が惜しまれる今日この頃、みなさまいかがお過ごしですか。
 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 生まれたばかりの娘の手足を見ると、実に細かくよくできたおもちゃのようで、これが本当に大きくなるのかな?ととても不思議な感じがします。あまりにもかわいくて食べたくなっちゃうね~と言う友人もいました。
 全身を振るわせてぎゃあぎゃあと泣き叫ぶ姿はパワー全開です。自分の存在を主張し、いまこの瞬間を生き延びることに必死です。そこには何のたくらみもありません。この世に出てきてくれたことへの感謝を思うと大騒音もBGMのようなものです。もともとは、誰もがこんなに純粋無垢な赤ちゃんだったのですね。

 奈良時代の歌人、山上憶良に次のような歌があります。

 術も無く苦しくあれば出で走り去ななと思へど兒らに障りぬ
 
 (すべもなくくるしくあればいではしりいななとおもえどこらにさわりぬ)

                        万葉集 巻五 八九九


 
 策も尽き果て苦しくて走り出て死んでしまおうかと思うけれど、子供のことを考えるとそんなことできないなあ・・・と解釈しました。

 奈良時代から1000年以上経ったいまも、人の親心はまったく変わらず、すぐに共感できました。世の中変わったものだらけの中で、人間の愛情や情緒は変わっていない、というのはすごいことではないですか!人間の情は技術革新のようなものとは無関係で、いまそのときが最大限度の状態にあります。(私の仕事は楽なものではありませんが逃げたい状況ではありませんのでご安心を・・・)

 このところ、人口減少問題に対してAI化を進めていくという話がよく出てきます。これからはさまざまな分野にAIが使われ、生活がますます安全で便利になっていくことでしょう。それは誠に結構なことで、当社でもお客さまに喜んで頂けることで、かつ仕事が効率的になることがあるのなら、AI化(機械化)を進めるべきである、と社員たちには話しています。

 しかし、どんなにAI化が進んだとしても、愛情、情緒、倫理、義理、社会、文化、芸術などの課題は、人間にしか解決ができない(感受することができない)のです。よい人間に成長するためにはこういうことが大切な基盤になるのではないかと考えます。

 一日一日を何とか生き延びていこう、と力いっぱい泣き叫ぶ赤ちゃんに、人間を豊かにする、人間性や人格を高めるような教育、環境整備をするのが親の責任なのだろう、と思います。

 いつもご利用くださり、ありがとうございます。今月も御指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
 
 参考文献:『新訂 新訓 万葉集 上巻』 佐々木信綱編  (岩波文庫)
 


  


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