ワンマンか?チームか?
吹く風も柔らかな季節となりました。みなさまいかがお過ごしですか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である」と言ったのは、経営コンサルタントの故一倉定先生でした。
この言葉を初めて聞いたときにはとても衝撃的でした。お亡くなりになってもう十五年以上になりますが、いまでも一倉先生を慕う経営者は多いと聞きます。
最近、私もその教えに触れる機会に恵まれ、それをきっかけに先生の御本を読み返してみました。社長だけを対象とするコンサルタントとおっしゃるだけあって、社長の仕事には大変厳しいです。
会社がつぶれたときの責任は、明らかに「社長ただ一人」にある。
社会のすべての批判は、文字通り「社長だけ」に集中する。副社長や専務が責任を追及されることは絶対にない。
文字通り「ワンマンの責任」なのである。このような意味合いからも、”ワンマン経営”が正しいのである。
このことを知っておれば、心ない人々が「あの人はワンマン社長だ」などという言葉が、いかに誤っているか分かるはずである。
合議制、民主経営などということはまったくの誤りで、「ワンマン経営」以外はありえないのである。
『経営の思いがけないコツ』 p190より引用
ワンマン社長というと、わがままな振る舞いをする社長のイメージがありますが、本来はこの意味でワンマンであるべきなのですね。
何事も部下に相談し、会議で決めるというようなことは、厳しい現実に対しては、決して正しいことではない。
部下に相談したくてもできない、会議にかけたくてもかけられない、ということもある。それらのことは、それが重要なことであればあるほど起こる可能性が高いということを、社長以外の人々は心得ていなければならないのだ。
何事も部下に相談するというのは、”管理”に関することであって、”経営"にはまったく当てはまらないのである。
『経営の思いがけないコツ』 p191より引用
誰にも相談できないことを抱えている、ということについてはその通りだと思います。社長はいつも孤独です。
P.F.ドラッカーは、ワンマン経営には否定的でした。ヘンリー・フォードの失敗を見たからです。フォードは他人がマネジメントの一員たることを許さず、経営管理者抜きでマネジメントをしました。そして、社内に目を光らせる秘密警察的な組織をつくるまでになります。ドラッカーは、チームによるマネジメントの必要性を説いています。
ワンマン経営か、チームによるトップマネジメントか、これらは相対する考え方のように見えますが、同列にとらえるものではなく、どちらかを選ぶようなものでもないと考えます。ワンマン経営とトップマネジメントチームについて、自社らしい組み込みが必要です。
当社には経営会議という名のトップマネジメントチームがあり、重要な機能です。しかし、最後は私の決断です。会社経営は少なくとも民主主義ではありません。
一倉先生のご本には、ある社長の言葉として「独裁すれども独断せず」とありました。
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
参考文献:
『経営の思いがけないコツ』 一倉定 (日本経営合理化協会出版局)
『一倉定の経営心得』 一倉定 (日本経営合理化協会出版局)
『現代の経営(下)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
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