トップマネジメント・チームと会社の良心
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は大変お世話になりました。誠にありがとうございます。本年も引き続きご愛顧のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
さて、中小企業では、すべての仕事を一人で抱え込んでいる社長も多いと思います。ドラッカーによれば「トップマネジメントの仕事とはチームによる仕事」です。トップマネジメントの仕事が一人ではだめでチームでなくてはならない理由は四つあります。
1.マネジメントの役割が要求するさまざまな体質を一人で併せ持つことは不可能である。
2.一人ではこなしきれない量がある。
3.一人だと継承の問題がある。
4.ワンマン体制では企業が成長できない。
『マネジメント(下)』 p20より抜粋して引用
これらの理由は、ほとんどの中小企業には当てはまる問題です。中小企業においては家族で分担することによってこれらの問題をカバーしている場合もあります。
トップマネジメント・チームの条件としては次の六つが挙げられています。
第一に、トップマネジメント・チームのメンバーは、それぞれの担当分野において最終的な決定権をもつ。各メンバーの決定に対し、他のメンバーが異議を唱えることはできない。
第二に、トップマネジメント・チームのメンバーは、自らの担当以外の分野について意思決定を行うことはできない。
第三に、トップマネジメント・チームのメンバーは、仲良くする必要はない。尊敬しあう必要もない。ただし攻撃し合ってはならない。
第四に、トップマネジメントは委員会ではない。チームである。チームにはキャプテンがいる。キャプテンはボスではなくリーダーである。
第五に、トップマネジメント・チームのメンバーは、自らの担当分野では自ら意思決定を行わなければならない。しかし、ある種の意思決定はチームに留保する必要がある。それらはチームとしてのみ判断しうる問題である。
第六に、トップマネジメントの仕事は、トップマネジメント・チーム内のコミュニケーションに精力的に取り組むことを要求する。
『マネジメント(下)』 p26-29より抜粋して引用
チーム内で仲良くする必要も尊敬する必要もない、というのは興味深い指摘ですね。だからこそコミュニケーションには精力的に取り組まなくてはならないのです。理想的なトップマネジメント・チームをつくるのは簡単なことではないことを私自身感じています。
チームによる経営で会社の理念がぶれてしまう恐れがあるのも心配です。よいチームができたとしても、成果だけ上げればよいわけではなくて、そのプロセスにおける価値観が当社の基準にあっているかどうかが大切だと思います。ドラッカーはトップマネジメントの仕事の一つとして次のように述べています。
基準を設定する役割、すなわち組織全体の規範を定める役割、良識機能を果たす役割がある。組織には、目的と実績の違いに取り組む機関が必要である。
『マネジメント(下)』 p10より引用
良識機能という言葉にほっとしました。ドラッカーを読んでいると、求めていた言葉がどこかに隠れているのですよね。これは会社の良心や道徳心を守る役割と考えてよいでしょう。成果を上げるためなら何をしてもいいわけではありません。会社の理念と現実が離れていないかどうかをチェックすることです。トップマネジメントが一人ならその人自身が体現することですが、チームとなると特に社長が見ていかねばなりません。
みなさまにとってすばらしい一年になりますことを心よりお祈りしております。まだ寒い日が続きます。お身体ご自愛くださいませ。
参考文献:
『マネジメント 課題、責任、実践(下)』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
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