企業に利益はない
いよいよ年の瀬も押し詰まってまいりました。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
年男だね・・・と言われ始めたのが昨日のことのようですが、もう師走になってしまいました。今年もいろいろな場面でお客さまにご迷惑をおかけしてしまい、反省することばかりでしたが、何とかここま進んでまいりました。
師匠のN先生は「人生は真っ暗闇の道を一人でとぼとぼ歩いていくようなもので、誰もついてこなくても信じた道を歩いて行かねばならない。」と説きます。ありがたいことに信頼する部下や家族が私を支えてくれますが、それでもときには驚くべきことが起こります。内面的には永遠に孤独感から解放されることはないと覚悟しています。
さて、みなさまは「企業には利益はありません」と言われたら、どのように思われますか?
「粗利益だって、営業利益だって、経常利益だってあるじゃないか!会計の基礎だ。財務諸表に書いてあるよ。」と指摘されてしまいそうです。
しかし、これはドラッカーの唱えた概念の一つなのです。
一般の人の無知を訴える企業人自身が、同じ無知という罪を犯している。彼ら自身、利益や利益率について初歩的なことを知らない。
(中略)
利益に関する最も基本的な事実は、「そのようなものは存在しない」ということだからである。存在するのはコストだけなのである。
P.F.ドラッカー 『すでにおこった未来』p57より引用
確かに、会社の中をどんなに探し回っても「利益伝票」というものは出てきません。あるのは納品書と請求書ばかりです。
およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。内部にあるのはコストセンターである。技術、販売、生産、経理のいずれも、活動があってコストを発生させることだけは確実である。しかし成果に貢献するかはわからない。
P.F.ドラッカー『創造する経営者』p5より引用
会社の中の活動はすべてがコストを生み出すものです。営業は利益を生み出すぞ、とおっしゃいますが、まず会議を開き、チラシをつくり、車で移動してお客さまのところまで行く、という行動すべてがコストです。しかもその行動が成果を生むかどうかは分かりません。
では、社内のコストを徹底的に切り詰めればいいのでしょうか。
管理可能な支出については、好況時に予算を増額し、景気にちょっとしたかげりが見えただけでそれを減額するような場当たり的な方法ではなく、たとえ間違っていたとしてもマネジメントの判断によって行う必要がある。
管理可能な支出については長期的な視点が必要である。あらゆる活動が短期間だけ強化しても成果はあがらない。しかも支出の急激な減額は、長年築いてきたものを一日で壊す。
P.F.ドラッカー 『現代の経営(上)』 p117より引用
単純なコストの切り詰めはますます会社を追い詰めていきます。社内のコストをカットすることと売り上げを増加させることには全く因果関係がないのです。コストカットは企業の目的である「顧客の創造」にはつながらないのです。
例えば、事業の目標として利益を強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる。今日の利益のために明日を犠牲にする。売りやすい製品に力を入れ、明日のための製品をないがしろにする。研究開発、販売促進、設備投資を目まぐるしく変える。そして何よりも資本収益率の足を引っ張る投資を避ける。そのため、設備は危険なほどに老朽化する。言い換えるならば、最も稚拙なマネジメントを行うよう仕向けられる。
P.F.ドラッカー 『現代の経営(上)』 p82より引用
私の読んできたドラッカーのいろいろな書籍から引用してきてしまいましたが、いくら説明してもこの概念はなかなか理解されません。私はうちの社員たちにこのことを一生懸命説明しています。
今年も当社をご愛顧いただき、心より御礼を申し上げます。これからも少しでもみなさまのお役に立てるよう努力をしてまいります。なにとぞご指導のほどよろしくお願いいたします。
どうぞよい年をお迎えください。みなさまのご多幸、ご健勝を心よりお祈りしております。
参考文献:
『すでに起こった未来』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
『創造する経営者』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
『現代の経営』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
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