卓越の戦略
日増しに秋の深まりを感じます。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、アベノミクスでお金の流れは大きく変わりつつありますが、私には好況感はありません。
私の商売は世の中の需要が喚起されたとしても、派生的に回ってくる業種です。景気の循環を待つのはナンセンスです。今できることを進めていくしかありません。
ジェイ・エイブラハムの『ハイパワーマーケティング』には「卓越の戦略」という手法が紹介されています。
マーケティングとか戦略とかというと、儲け話のように聞こえて少しいやらしい感じがします。実際、この本もそのような面を否めませんが、純粋に内容を受け止めたいと思います。
「卓越の戦略」とは、お客さまのニーズを自分のニーズよりも常に優先させることです。たとえば次のようなことです。
「あなたに本当に必要なのは、欲しいとおっしゃった商品より安い商品ですよ」
この方法では、最初の販売額は小さくなるが、新しい友人ができ、そのうちの何人かは、次の購入時期まであなたを覚えていてくれる。その人は間違いなくあなたやあなたの会社について、自分の友達にそのすばらしさを伝えてくれるだろう。
『ハイパワーマーケティング』 p65より引用
自分の売上げを重視するのではなくお客さまが得になることを考える・・・・・・手段として上手に行おうとするのではなく、純粋に愚直に行うことが大切です。
多くの人々が犯している致命的なミスは、間違ったものに愛着をもっていることである。
具体的にいえば、自社の製品、サービス、自分の会社に惚れ込んでいるのだ。
あなたは、自分の製品やサービス、または会社を盲目的に信じているに違いない。しかし、本当に愛着を持つべき相手は、あなたのクライアントなのだ。
『ハイパワーマーケティング』 p69より引用
このような考え方を実践している企業があります。埼玉県にあるホテルグリーンコアの事例です。
グリーンコアでは、満室になった後に受けた「今日、空いていますか?」という宿泊予約の電話に対し、簡単に「満室です」で終わらせない。まずは、そのお客さまの連絡先を聞いて控える。次に、近隣ホテルの空き状況を電話で尋ね、もし空いていたらそこの予約を代わりに取って差し上げて、その旨を伝える。もし、どこも満室で部屋が取れない場合は、部屋が空き次第伝える。
そうやって宿泊希望のウェイティングリストが出来上がる。多いときで五組くらいになる。
『包むマネジメント』 p145-146より引用
競合のホテルの空きまで探して差し上げるというのは、お客さまのニーズを優先していることに他なりません。
このようなサービスを行おうとする際に障害となるのは、経営者が収支を心配してしまうことです。
かつてこのホテルでは、低反発枕を気に入ったので売ってほしいと頼まれたお客さまに、その枕を差し上げたことがあるそうです。それについて、当ホテルの会長である金子卓司さんは次のように述べています。
「まず、全員が欲しがるということはあり得ないでしょう。あり得ないことを想定して行動を止めるという判断が、いろんなことのネックになっていると思います。もし、万が一にでも『全員が欲しい』というようなことになったら、今度は販売すればいいんです。あり得ないリスクを想定して行動しないという判断は、グリーンコアの美徳に反することなのです。まずは、行動してみよう。もし失敗だったら軌道修正すればいいんです」
『包むマネジメント』 p80より引用
「お客さまのニーズを自分のニーズよりも優先させる」あるいは「お客さま第一」というお題目はどこの会社でも唱えていることです。
では会社の利益はどうなるんだ!?というのが社長の本音でしょう。「卓越の戦略」はそこを乗り越えることを社長に求めています。
季節の変わり目です。みなさまどうかご自愛くださいませ。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
いつもご利用いただき、ありがとうございます。
参考文献:
『ハイパワーマーケティング』 ジェイ・エイブラハム(著) 金森重樹(監訳) (インデックス・コミュニケーションズ)
『包むマネジメント』 近藤寛和 (ぶんか社)
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