好きなことと、なすべきこと
ドラッカーの『明日を支配するもの』第6章「自らをマネジメントする」より引用いたします。
自らの果たすべき貢献を考えることは、知識の段階から行動の段階への起点となる。問題は、何に貢献したいと思うかではない。何に貢献せよと言われたかでもない。何に貢献すべきかである。
P.F.ドラッカー 『明日を支配するもの』 p213-214より引用
かつての大企業では、終身雇用を想定して、定年までの長い期間にわたる人材開発がプログラムされていました。
いまでも終身雇用を望む若者は多いと聞きますが、実際には転職する人も多いので、企業のプログラム通りに自分のすべてを任せてしまうのは、自分に対して少々無責任であるように思います。
何をすべきか、何に貢献すべきかは、親が決めることでもなく、奥さんが決めることでもなく、会社が決めることでもなく、自分で決めることです。
組織においては組織の指示に従うとともに、空いた時間には自分で自分の開発を進めるべきです。
空いた時間に弁理士や弁護士や中小企業診断士などの資格を取った人は枚挙にいとまがありませんし、新しい事業を起こした人も多いです。
ドラッカー的にいえば、強み、仕事の仕方、価値観という三つの問題に自分の答えをもって、自分が貢献すべきところに貢献せねばなりません。
それは、好きなことをする、ということとは違います。
好きなことをすることが、貢献、自己実現、成功につながると考えた者のうち、実際にそれらのものにつなげた者はほとんどいなかった。
P.F.ドラッカー 『明日を支配するもの』 p215より引用
好きなことをすれば貢献になるという考え方は学生運動の高まりの背景にあった、と続けて書かれています。
学生運動はノスタルジックではありますが、いまは古いものとしか映りません。
たとえ、好きなことをするとしても、それが貢献すべきことかどうかは、自分で判断せねばなりません。
「好きなことをする」というのは非常に人気のある考え方で、人からうらやましがられることですが、ドラッカーを読んでいると、やや考えの甘い人の言葉に聞こえてきます。
参考文献:
『明日を支配するもの』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
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