意見の不一致を利用する

Hitoshi Yonezu

2014年08月06日 10:00

 前回のブログで、ドラッカーの『経営者の条件』の第7章より、意思決定をする際には意見の不一致が必要であるという部分を紹介しました。

 続いて、意見の不一致が必要な理由が三つあげられています。

 1.組織の囚人になることを防ぐからである。

 2.選択肢を与えるからである。

 3.想像力を刺激するからである。

         P.F.ドラッカー『経営者の条件』p200-203より引用


 私が前回ご紹介したように、経営者として独りよがりになるのが危険であるという理由の他に、このような三つの理由があったわけです。

 意見の不一致といっても、よく理解ができていないままに、ただ気に入らないからという理由で反対意見を表明する人もいるでしょう。

 ばかな人もいれば無用の対立をあおるだけの人もいることは確かである。だが明白でわかりきったことに反対する人は、ばかか悪者に違いないと思ってはならない。反証がないかぎり、反対する人も知的で公正であると仮定しなければならない。

            P.F.ドラッカー『経営者の条件』p203より引用


 とんでもないことを言いだす人がいたとしても、まずは受け入れ検討して、本人が納得するような反証を探す事が必要なのです。

 成果をあげる人は、何よりもまず問題の理解に関心をもつ。誰が正しく誰が間違っているかなどは問題ではない。

            P.F.ドラッカー『経営者の条件』p204より引用

            
 人で判断してはいけません。

 過去の対立の経験からいくら気に入らない相手だとしても、そのことを判断材料にしてはいけないわけです。感情的に判断することは間違いを導きます。

 いかに感情が高ぶろうと、またいかに相手側が筋が通っていないと確信しようと、正しい意思決定を行おうとするならば、選択肢を十分に検討するための手段として反対意見を見るべく努力しなければならない。あらゆる側面を丁寧に見るための手段として意見の対立を使わなければならない。
 
    P.F.ドラッカー『経営者の条件』p204-205より引用


 意見の対立を「手段」と見ているところがドラッカーらしいですね。

 意見が対立しても感情的になってはいけないのです。大声を出し合ってけんかをするのはうまい方法とはいえません。
 
 エグゼクティブにとって意見の不一致は、あくまでも成果をあげる意思決定のための「手段」なのです。
 
  


 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

  ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

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