ヴェイルの意思決定

Hitoshi Yonezu

2014年07月04日 10:00

 ドラッカーによれば、ベル電話会社のセオドア・ヴェイルはアメリカの企業史上、意思決定において最も成果をあげた人だそうです。

 『経営者の条件』には、ヴェイルが社長在任中の20年間に行った四つの戦略的な意思決定が紹介されています。

 ヴェイルはどのような意思決定をしたのでしょうか。

 1.ベルの事業は公共のニーズを予見し、それを満足させることであると規定する決定をおこなった。(われわれの事業はサービスである。)

 2.ベルのような全国規模の通信事業における独占体はまったく拘束を受けない民間企業ではありえないと考え、国有に代わる方策として公益のための規制の強化を考えた。(国有を回避)

 3.産業界において最も成功した企業研究所の一つ、ベル研究所を設立した。

 4.ベルのための大衆資本市場を構築した。(AT&Tの普通株)

         P.F.ドラッカー『経営者の条件』p155-161より引用


 これらの決定についてはドラッカーは次のように評価しています。

 これらヴェイルの意思決定は、単にベルが抱えている問題を解決するためのものだった。しかし背後にあった基本的な考え方は真に成果をあげる意思決定というものの特質を表していた。

           P.F.ドラッカー『経営者の条件』p161より引用



 ヴェイルはベル電話会社を国有にされてしまうことを避けつつ、世界最大の電話会社に育てました。

 その裏には重大な意思決定がなされていたのです。
 
 ご紹介した意思決定のうちの一つ目は、「われわれの事業はサービスである」ということです。

 これは、ヴィエルが社長に就任して直ちに社訓とした言葉だそうです。

 ヴェイルは利益よりも提供したサービスを評価するようにしたそうです。

 ヤマト運輸の小倉昌男さんも、その著書『小倉昌男 経営学』において「サービスが先、利益は後」と述べています。

 参考ブログ:「サービスが先、利益は後」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1271529.html
 
 サービス業のイメージがなかった通信業や運輸業をサービス業であると認識したことが大きな発展の基礎になった意思決定だったのです。
 
  


 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

  ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

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