決定と「よき意図」

Hitoshi Yonezu

2014年07月03日 10:00

 前回は、意思決定の方法についてご紹介しました。

 続きの部分です。『経営者の条件』第6章より引用します。

 決定のプロセスで最も時間がかかるのは、決定そのものではなく決定を実施に移す段階である。決定は実務レベルに下さない限り決定とはいえず、よき意図にすぎない。このことは、決定そのものが基本の理解に関わるものであるに対し、その実施は可能な限り実務レベルに近いところに位置づけなければならないことを意味する。

         P.F.ドラッカー『経営者の条件』p155より引用


 
 原文では次のように表現されています。

They know that the most time-consuming step in the process is not making the decision but putting it into effect.Unless a decision has "degenerated into work" it is not a decision;it is at best a good intention.This means that,while the effective decision itself is based on the highest level of conceptual understanding,the action to carry it out should be as close as possible to the working level and as simple as possible.

”The Effective Executive” p114


 翻訳は明快ですが、原文は分かりずらいですね。(私の英語力は受験英語までのレベルですので・・・・・・)

 決定することは具体的なことのように思えますが、ドラッカーによれば、概念的なものなのですね。

 決定をしたとしても、具体的なアクションに落とさないかぎり、何も起こりません。

 "degenerated into work”の解釈が難しいです。翻訳は「決定は実務レベルに下さない限り」となっていて、段階を下げるような意味合いです。

 degenerate は退化するという意味で、悪化するような意味あいをもつ言葉です。

 決定(decision)と実務(work)の間には格差のようなものがあるのでしょうか。

 workはエグゼクティブの仕事ではない、というようなニュアンスがあるのかもしれません。

 決定が実行に移されなくては「よき意図にすぎない」というのは誠にその通りですね。

 決定をしても、誰が?いつ?どこで?どうやって?行うかを具体的に決めないと、ただの決定です。

 これを「よき意図」"a good intention"と表現したのは痛快です。

 エグゼクティブは「決定したぞ!」という段階では決して喜んではいけません


 degenerate 退歩する、堕落する、退化する(リーダーズ英和辞典)

  


 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

  ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

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