仕事の圧力に屈すると

Hitoshi Yonezu

2014年06月12日 10:00

 ドラッカーの『経営者の条件』第5章です。

 前回ご紹介したのは「限られた時間の中で成果をあげるために、どの仕事が重要であるかを決めなくてはならない、それを決定するのは自分自身か?それとも仕事の圧力か?」という内容でした。

 圧力に屈したときには重要な仕事が犠牲にされる。特に、仕事のうち最も時間を使う部分、意思決定を行動に変えるための時間がなくなる。いかなる仕事も、組織的な行動や姿勢の一部になるまではスタートしたことにはならない。
 いかなる仕事も、誰かが自らの仕事として引き受け、新しいことを行う必要や新しい方法を行う必要を受け入れなければ始まらない。いかにプロジェクトとして完結しているかに見えても、それを誰かが自らの仕事としてルーティン化しなければ完結するに至らない。
 時間がないためにそれらのことが行われない場合には、それまでの仕事や労力はすべて無駄になる。だが仮にそうなったとしても、それは単に仕事の優先順位を決定しなかったことの当然の報いである。

        P.F.ドラッカー『経営者の条件』p148より引用


 圧力に屈すると重要な仕事が犠牲にされる・・・・・・

 どの仕事が重要なのかを自分で決めるのではなく、仕事から圧力によって決めると、重要な仕事が犠牲にされます。
 
 特に、意思決定を行動に変えるための時間がなくなり、仕事としての形をなさないことになります。 

 この部分は、原文では次のように表現されています。

Typically,there will then be no mo time for the most time-consuming part of any task,the conversion of decision into action.

”The Effective Executive” p109


 仕事からの圧力とは、一番うるさい人からの仕事であったり、一番声の大きな人からの仕事であったり、人間関係からの依頼だったりするので、重要かどうかとは全く関係がないからです。

 重要かどうかを圧力によってあおられて、あせって決めるようなことがないように、事態が発生する前にエグゼクティブ自身が自分で決めておかねばなりません。

 次に少し内容が変わります。

 新しい仕事は、誰かが自分の仕事として引き受け、新しい方法を受け入れ、仕事としてルーティン化しなくては完結したことにはなりません。

 このことは、圧力によって間違って選択した仕事のことを指すのか、選ばれなかったなすべき仕事のほうを指すのか、混ざってしまっていてはっきりしていないように読めました。

 文脈からいえば、自分の選んだなすべき仕事のほうと考えるべきでしょう。

 しかし、いずれにしても、責任者の引き受け、新しい方法の受け入れ、ルーティン化ができなければ、その仕事は無駄になります。
 
 大切な仕事を形にすることができず、ルーティン化することができないまま、時間と労力が無駄に流れていきます。

 それが、圧力に負けた結果です。
 
  


 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

  ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

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