新事業のために人を雇うこと
ドラッカーの『経営者の条件』第5章より引用します。
新しいもののために新しく人を雇うことは危険である。すでに確立され順調に運営されている活動を拡張するには、新しく人を雇い入れることができる。だが新しいものは、実績のある人、ベテランによって始めなければならない。新しい仕事というものは、どこで誰かがすでに行っていることであってもすべて賭けである。
したがって経験のある人ならば、門外漢を雇って新しい仕事を担当させるなどという賭けを倍にするようなまねはしない。よそで働いていたときには天才に見えた人が、自分のところで働き始めて半年も経たないうちに失敗してしまうという苦い経験を何度も味わっている。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p145-146より引用
この部分は前にもご紹介しました。
参考ブログ:新しいものを始めるときには
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1026040.html
続きの文章を引用いたします。
組織には、違うものの見方の人を部外から入れてやる必要がある。内部の力だけで成長しようとする組織は澱み、何も生み出せなくなる。
しかしリスクが大きなトップの地位や、重要な新しい活動の責任者には、外部からの人間をつけてはならない。外部の者はまず初めに、トップの次の地位や明確で誤解のしようのない活動の責任者の地位につけるべきである。
P.F.ドラッカー『経営者の条件』p146より引用
組織を活性化するためにも、違うものの見方をする外部の人間が必要です。
経営者は他の組織で生き生きと活躍している人を見ると「うちに連れてきて○○の仕事をさせたら、うまくい行くだろう・・・・・・」と考えます。
しかし、組織や環境が変わってしまえば、同じ活動ができるとは限りません。
責任の大きな仕事の地位や、新しい仕事のトップにいきなり外部の者をつけてはなりません。
外部の者を重要な仕事の責任者にしたいと思うのであれば、その前に、二番手の地位につけるか、仕事の内容が確立されている部門の責任者にすべきです。
そこでの活動の様子を見た上で、昇進や移動をさせたほうが確実です。
ここは原書では次のように表現されています。
One brings them in just below the top and into an activity that is already defined and reasonably well understood.
”The Effective Executive” p107
「明確で誤解のしようのない活動」"an activity that is already defined and reasonably well understood”については、例えば、現場系の仕事で手順が明確になっていて本人の努力だけで成果が上げやすいものなどが考えられます。
隣の芝は青く見えるものですが、その芝を取って植えたからといって、うちの芝が青く茂るかどうかは分かりません。
自社の社風や組織になじませるために、時間と段階が必要です。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
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