貢献と成果
ドラッカーの『経営者の条件』第3章「どのような貢献ができるか」の最後の部分には「貢献に焦点を合わせることによって得られる三つのもの」がまとめられています。
抜粋して引用します。
われわれは貢献に焦点を合わせることによって、基本的な問題の一つについて解決に近づくことができる。混乱と混沌に対する対応であり、それらのうち意味あるものと雑音にすぎないものとの識別である。
(中略)
われわれは、貢献に焦点を合わせることによって、原則とすべきものを知る。(中略)組織の中にあって他の人たちに依存しているという組織に働く人に特有の弱みを強みに転換することができる。すなわち、チームの形成を可能とする。
そして最後に、貢献に焦点を合わせることによって、組織の内部にひきこもることを防ぐ。
(中略)
貢献に焦点を合わせるということは、つまるところ、成果をあげることに焦点を合わせることである。
『経営者の条件』 p98-99より引用
訳文をとおして読むと、得られるものは四つあるように読めるのですが、原文を読んでみると、訳文とは改行の位置が違っています。本来は三つです。
1.混乱と混沌の中身の識別
2.組織に働く人の弱みを強みに転換する
3.組織の内部から外部へと視線を変えさせる
改行位置の違いを原文で説明したいのですが、この部分の原文は長いので、引用するのはやめておきます。原文のp70でご確認ください。
この章の最後の一文です。
貢献に焦点を合わせるということは、つまるところ、成果をあげることに焦点を合わせることである。
原文では次のように表現されています。
To focus on contribution is to focus on effectiveness.
”The Effective Executive” p70
まさに、訳文どおりです。
本書には「貢献(contribution)」と「成果(effectiveness) 」という言葉が繰り返し出てきますので、どっちがどっちでそれぞれ何を示すのか、区別が分かりずらいと思います。
貢献は成果に結びつくという意味では最終的には同じところへ行きつくのですが、この文章によって、二つの言葉は段階が違うということに気がつくと思います。
貢献することによって成果があがる、ということです。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
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