意思決定とコンピュータ
ドラッカーの『経営者の条件』の第7章「成果をあげる意思決定」より引用いたします。
コンピュータは、意思決定者、少なくともミドルの意思決定者に取って代わるといわれてきた。数年のうちに日常の決定のすべてをコンピュータが行うようになり、遠からず戦略的な決定さえ行うようになるといわれた。
しかし現実には、コンピュータのおかげでエグゼクティブは、今日その場しのぎの対応として処理しているものを、やがて本当の意思決定として行わなければならなくなる。すなわちコンピュータのおかげで、これまでは反応するだけだった人たちのきわめて多くが、真の意思決定者、真の執行者とならなければならなくなる。
P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 第7章 p209より引用
『経営者の条件』はいまから47年前、1966年に書かれています。
コンピュータがこれだけ普及しているというのに、いったいどれだけの人間が真の意思決定者、真の決定者になっているでしょうか。
ドラッカーの慧眼です。
第7章の末尾は次のようにまとめられています。
コンピュータの出現が、意思決定に対する関心に火をつけることになった理由は多い。しかしそれはコンピュータが意思決定を乗っ取るからではない。コンピュータが計算を乗っ取ることによって、組織の末端の人間までがエグゼクティブとなり、成果をあげる決定を行わなければならなくなるからである。
P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 第7章 p216より引用
もはや、世界中からデータを集めることができますし、数値さえ入力しておけば、さまざまな分析が瞬間のうちにできるようになっています。
いかなる立場の人間も意思決定や執行ができる状況になっています。
にも関わらず、本当に万人がコンピュータを使って意思決定をしているかどうか?です。
人間がコンピュータに使われることなんて・・・・・・と思います。
しかし、コンピュータの前に座ってずっと娯楽にふけっていたらどうでしょうか。
あるいは、データや集計結果を眺め、何も考えずに上司に流しているだけだとしたら、どうでしょうか。
まさに、コンピュータに使われている、という姿に見えてきます。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
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