人事考課制度の問題点
ドラッカーの『経営者の条件』の第4章「人の強みを生かす」より引用いたします。
また現在の人事考課制度とその背後にある思想は、潜在能力にあまりに関心をもちすぎる。経験のある者ならば誰でも知っているように、将来の可能性や別の仕事での可能性など評価することはできない。潜在能力とは見込みの言い換えにすぎない。もし見込みがあったとしても、実現されないことのほうが多い。逆に見込みがないと思われていた人たちが実際には成果をあげる。
われわれが行うことができるのは、現実の評価だけである。
P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 第4章 p119より引用
『経営者の条件』は1966年に発行されています。さすがにいまでは潜在能力を人事考課の中心に考えることはないでしょう。
新入社員や若手社員の場合には仕事に関する基礎的能力や潜在的能力を見てあげることもありますが、ベテラン社員や管理職の評価は、現実にどのような貢献をしてくれたかが問われるようになっています。
気をつけなくてはならないのは、モチベーションが高い人、前向きな発言をする人、社会的意識の高い人などの場合です。
こういう方たちは、人事考課面談の際に企業や上司にとってよいことやうれしいことを話してくれるので、実際の成果が上がっていなくても、評価が高くなりがちです。人事考課におけるハロー効果というものです。
ドラッカー的に考えると、発する言葉からその人物の潜在能力を見てしまっているのです。
潜在能力というのは発揮してから初めて能力と呼べるものです。よい言葉を発してくれるのはありがたいですが、実行に移すことができなければ、言うだけの人になってしまいます。
何年もずっと潜在能力のままだったら、気がつかなくてはなりません。人柄だけで仕事を評価するのは不公平です。やはり、その人物がどう貢献しているか、を見るべきなのです。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
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