組織ができて仕事はどう変わったか

Hitoshi Yonezu

2013年09月10日 10:00

 P.F.ドラッカーの『非営利組織の経営』より引用いたします。

 成果をあげる人とあげない人の差は才能ではない。いくつかの習慣的な姿勢と基礎的な方法を見つけているかどうかの問題である。しかし組織というものが最近の発明であるために人はまだそれらのことに優れるにいたっていない。
 成果をあげるための方法は、かつて一人だけの工房の時代と、今日のような組織の時代とでは異なる。一人の工房では仕事が人をつくりあげる。組織では人が仕事をつくりあげる。

           『非営利組織の経営』 p211より引用


 この部分を読むと、世の中に組織というものが出現して以来、仕事の方法は変わった、とドラッカーが認識していることがはっきりと分かります。

 分かりやすくするために、かなり大雑把に申し上げますが、組織ができる前の社会では、鍛冶屋、両替商、米屋、酒屋など個人が自分ができる仕事をしていました。商売をしていない人は畑を耕し、米を育てて、自給自足のような生活をしていたでしょう。用事があれば「野次さんのやっている鍛冶屋へ行く」という感覚だったでしょう。
 それぞれの個人は、職人が育つがごとく、仕事に育ててもらったのです。

 ここで、世の中に組織というものが出現すると、人は組織に所属するようになります。そこでは人よりも組織が前面に出てくるようになります。個人は自分のもつ力を発揮し、組織に貢献せねばなりません。組織は、個人に変わって効率的、機能的に動いて、社会に対して有効な価値を提供する集団だからです。組織は存在する以上、成果を上げなくてはなりません。

 組織の出現した現代においては、鍛冶屋さんの息子だから鍛冶屋にならねばならないわけではありませんし、鍛冶屋だからといって鉄を打ってさえいればいいということでもなくなりました。
 鍛冶をやらないからと親父さんに勘当されたとしても、生きていく道がなくなるということもありません。別の組織に入って自分の力で貢献するという方法があります。

 特別な才能がない人でも生きていかれるようになったのは組織が出現したおかげです。

 ただ、組織に所属するからには、組織に貢献し、成果を上げねばなりません。

 そのために必要なことは、冒頭の文章にあるように「いくつかの習慣的な姿勢と基礎的な方法を身につけているかどうか」です。

 組織に所属する人は、組織に貢献するために、自分を制御せねばならないのです。

 具体的には『経営者の条件』に書いてある5つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)です。

   


 参考文献:
 『非営利組織の経営』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 10月22日19:00より『実践するドラッカーシリーズ』の佐藤等先生が上田市ささやにお越しになり、講演会を開催されます。ドラッカーを知る絶好の機会です。詳細は近々発表します。ご参加お待ちしております。

関連記事