手をつけてはならない
ドラッカーの『経営者の条件』の第7章「成果をあげる意思決定とは」より引用いたします。
楽観的というわけではなく、何もしなくても問題は起こらないという状況がある。何もしないと何が起こるかという問いに対して、「何も起こらない」が答えであるならば、手をつけてはならない。状況は気になるが切実ではなく、放っておいてもさしたる問題も起こりそうにないときには手をつけてはならない。
P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 第7章 p206より引用
この部分を初めて読んだときには、正直申し上げて「これでいいのか?」と思ってしまいました。実際、私の本にはそういう書き込みがしてあります。
ドラッカーはズバッと書くので、初めて読むときには誤解してしまうことがあります。
この部分については後から詳しく説明がなされています。
工場の合理化のために、効果は疑われるにも関わらず、二、三人の年配の工員を解雇してしまう事例が紹介されています。危機が去ったときには、事業を救ったことは忘れられ、工員に対して無慈悲だったことだけが残ってしまいます。
ローマ法には「為政者は些事に執着するべからず」という言葉があるそうです。
あまりに熱心で夢中になりすぎると、やりすぎてしまうことがあると思います。
本人は目的達成のためにまじめに業務を遂行しているので、まったく悪気はなく、周りが見えなくなってしまっているだけです。
後からでないと、なかなか気づけないですね。
冷静なときに「手をつけない」ということも一つの手段として身にけておきたいものです。
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
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