職人技から手順へ

Hitoshi Yonezu

2013年04月01日 10:00

 桜の便りが次々に聞かれるこの折、みなさまいかがお過ごしでございましょうか。

 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 株高と円安がどれだけ我が国に明るい雰囲気をもたらしてくれたことでしょうか。短期的な数字の動きが日本を明るくしています。この雰囲気のうちに日本の構造を変えるような政策を実行してほしい、と願っています。

 さて、私どもの商売はお客さまの現場での仕事が多いのですが、サービスを担当する者や、お料理を調理する者も、いまではいわゆる「職人」ではなくなってきています。

 私はむしろ「職人」にはさせないようにしています。
 
 「職人」というと、さまざまな印象をおもちになると思います。私が申し上げたいのは仕事の仕方のことです。

 自分の知っていることを明らかにせずに「背中を見て覚えなさい」と言うのなら、職人の教育方法です。有名な料理人やプロ野球選手もこの方法で育ってきたと聞いたことがありますし、うちの従業員のなかでも40歳以上の者はこの方法に懐かしさを覚えるはずです。これはこれで大変有効ですし、否定するものではありません。

 ただ、当社では仕事の基本の部分についてはこの方法はさせないようにしています。私は仕事の手順や方法を文章で明らかにすることを従業員に求めています。

 一定の水準を維持しながらお客さまのお役に立つためにはその方が効果的だと思うからです。背中を見ている時間がもったいないのです。

 仕事の方法を知る、手順を覚えるということは、仕事に知識が適用されているということです。そこで働く者には、次のような責任が求められます。

 知識を基盤とする組織においては、あらゆる者が自らの目標、貢献、行動について責任を負う。ということは、組織に働く者はすべて、自らの目標と貢献について徹底的に考え、責任を負わなければならない。

      P.F.ドラッカー 『ポスト資本主義社会』 第5章p139より引用


 その結果として求めるのは次のような組織です。

 目指すべきは、組織に働く者全員を責任ある存在にすることである。われわれが問うべきは、「いかなる資格をもつか」ではない。「いかなる責任をもつか」である。知識組織におけるマネジメントの仕事は、全員をボスにすることではない。全員を貢献者にすることである。

      P.F.ドラッカー 『ポスト資本主義社会』 第5章p141より引用


 従業員が会社という組織に貢献すること、そして、組織としてはできる限りお客さまのお役に立つことです。

 遠いですが、確実に進めていきたい道です。

 ご指導ご鞭撻のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 末筆となりますが、みなさまのご健勝、ご多幸を心よりお祈りいたします。

  


 参考文献:
 『ポスト資本主義社会』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)


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