『世界のお金は日本を目指す』を読んで

Hitoshi Yonezu

2013年02月07日 10:00

 岩本沙弓さんのご著書『世界のお金は日本を目指す』を拝読いたしました。
 
 岩本さんは1991年より日米加豪の金融機関においてヴァイス・プレジデントとして外国為替、短期金融市場取引を中心にトレーディング業務に従事され、現在は金融コンサルタント、経済評論家としてご活躍されています。
 
 日本経済や日本国債の先行きについて強気の発言をされる方です。岩本さんのご発言には前から興味があって、どんな論理なのか早く読みたいと思っていました。

 日本国債がデフォルトしない論理は他の同様の強気の論者とほぼ同じでした。

 日本国債は国内からの資金で九二%まかなわれています。この比率が三〇%から四〇%にはならないと、まず海外投資家からの売り圧力は発生しないでしょう。
 皆さんの預金が国債購入にまわっているわけですから、この九二%の比率を下げるためには、日本国民が一斉に預金を銀行から引き出し、タンス預金にするか、外貨預金をしなければなりません。一斉にです。

           『世界のお金は日本を目指す』 p51より引用


 これまでソロスをはじめ海外勢が何度も売りを仕掛けたそうですが、敵わなかったそうです。

 むろん、今後何年先になるかわかりませんが、政治が相変わらず機能不全のまま国の借金がずっと増え続ければ、日本国債の海外の保有比率が上がり、日本の財政問題を取り上げて攻撃される場面が訪れるかもしれません。
 しかし、それまで相当の余力と時間があるにもかかわらず、国家破綻や財政危機を闇雲に訴えるのはとてもおかしなことです。

           『世界のお金は日本を目指す』 p52より引用


 興味深かったのは、円高に対抗した為替介入についてです。

 2011年10月31日からのわずか5日間の為替介入で、当時の安住財務大臣は9兆円もの資金を投入しました。
 その資金は政府債務残高のなかの、政府短期証券となって示されています。政府短期証券のうちのほとんどは外国為替資金証券の残高だそうです。

 一九九〇年代は四〇兆円だったものがいまや当時の三倍である一二〇兆円に迫る勢いです。ここ一〇年余り、介入が実施されなければ八〇兆円近くの財源が確保できたわけです。効果のないものにこれだけの資金を投じるのですから、異常です。

            『世界のお金は日本を目指す』 p70より引用

 
 いま(2013年2月)はだいぶ円安に向かっていますが、為替介入をしているというわけではありません。

 税収が減って消費税の増税をしようとしているのに、これだけのお金を投入してしまったことには疑問が残ります。

 このほかにも面白い話題がいくつも紹介されています。なかなか骨太な本です。みなさまもご参考になさってください。
 
  


 参考文献:『世界のお金は日本を目指す』 岩本沙弓 (徳間書店)
 



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