『山手線に新駅ができる本当の理由』を読んで

Hitoshi Yonezu

2012年09月28日 10:00

 市川宏雄さんのご著書『山手線に新駅ができる本当の理由』を拝読いたしました。

 市川さんは1947年生まれ、早稲田大学理工学部建築学科、同博士課程を経て、ウォータールー大学大学院でPh.Dを取得、現在、明治大学専門職大学院長、公共政策ガバナンス研究科長を務めておられます。
 先進国から途上国まで都市整備や地域開発に数多く参画、国際都市間競争下での都市戦略を提言されています。東京都の都市計画審議会などの委員も歴任されている東京研究の第一人者だそうです。

 お正月が明けきらぬ新聞の一面に「山手線に新駅」の記事が大々的に踊っていたのを覚えている方は多いのではないでしょうか。
 私もいったいどういうことなのだろうと興味深く読みました。

 2020年を目指して、品川駅と田町駅の間に山手線で30番目の新駅ができるというニュースでした。

 いわれてみれば昔から田町と品川の間は他の駅間に比べて少し長いなあと感じておりました。
 この場所にある品川車両基地を有効活用するというわけです。

 ここには単に新しい駅を作るだけではないのです。
 東京都の掲げる「アジアヘッドクォーター特区」構想にもとづいて、規制緩和や法的な優遇措置を行い、外国企業にとって魅力的なビジネス環境を提供したいという考えがあります。
 「アジアヘッドクォーター構想」は2011年に総合特別区域法の国際戦略総合特区として認められ、国のバックアップも受けられるようになっているそうです。

 世界に開く新しい街を作るという壮大な構想だったわけです。

 この話が出てくる元になったのは「東北縦貫線」の開通なのだそうです。
 東北縦貫線とは、「現在上野駅止まりの宇都宮線・高崎線・常磐線の線路を延長して、3線とも東京駅まで乗り入れようとするもの」で、山手線の混雑緩和に相当な効果があるそうです。この工事は2014年度中の完成を見込んでおり、完成すれば上野駅―品川駅の所要時間が11分短縮できるそうです。

 この線路ができることでいままで品川に停まっていたいた車両を田端、尾久、小山、籠原などにある車両センターに回送できるようになるため、品川車両基地のスペースが不要になるのです。

 この本には他にも、東京と羽田を新幹線で、また成田と羽田をリニアモーターカーで結ぶ話など、夢の計画が紹介されています。

 市川さんは東京への集中を否定せず、地方の将来については割り切った考え方をされています。地方に住む人間としては賛成できない面もありますが、東京に発展してほしいと願う気持ちは同じです。

 交通網の発達は生活やビジネスを大きく変えます。

 どうぞご参考になさってください。

  


 参考文献:『山手線に新駅ができる本当の理由』 市川宏雄 (メディアファクトリー新書)
 

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