通貨の不安定さ
1ドル=77円台、1ユーロ=95円台に突入した先週末。比較的、日本円が安全とはいっても、日本の国家財政も大変なことになっていて、安全といえるのでしょうか。為替相場はまさには暴れまくっています。
ドラッカーは『明日を支配するもの』第2章より引用します。
だが、アメリカをはじめ、ほとんどあらゆる国の政府が、変動相場制によって得られた国内政策上の自由を濫用したために、通貨がおそろしく不安定となった。今後ともずっと不安定さは続くに違いない。政治的存在としての各国政府が、自らの政治権力を犠牲にしてまで、財政政策、金融政策を健全なものにすることは、全く期待できない。
もちろん、新設のヨーロッパ中央銀行は、地域共同体の通貨たるユーロの安定をはかろうとするであろう。しかしEU加盟国が、それぞれの国内政策よりもユーロの安定を重視するであろうというのは甘い期待にすぎない。
つまり、これからの経営戦略は、通貨は野放図に動くものであり、不安定きわまりないものであるとの前提にたたなければならない。
『明日を支配するもの』より引用
『明日を支配するもの』の第一刷は1999年に発行されています。
つまり、ドラッカーは13年前にいまのこの状況を見通していたというわけです。
・・・・・・政治的存在としての各国政府が、自らの政治権力を犠牲にしてまで、財政政策、金融政策を健全なものにすることは、全く期待できない。・・・・・・
ブキャナンの公共選択論によって証明されるまでもなく、現実はまさにこのとおりで、財政政策、金融政策は政治の恣意的な力によって動かされています。
また為替相場は、実需や論理を超えたところで動いていて、FXに代表されるように個人投資家にとってさえ投機の対象となっています。
ただ経済が政治の思いどおりにはなるかまでは不確かで、誰の?どういう?思惑で動いているのかは分かりません。
経済は魑魅魍魎が絡み合っています。
大学や大学院で学んだ経済理論を思い出すたび、無力感を覚えます。
この混沌とした世界で、私は手探りの感覚で一つひとつ確かめながら、次の一手を出していかねばならないのだと思います。
参考文献: 『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』
P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
参考ブログ:竹中平蔵著『経済古典は役に立つ』を読んで
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e867519.html
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