『中国人の正体』を読んで
中国問題評論家、石平(せき・へい)さんのご著書『中国人の正体』を拝読いたしました。
著者紹介によりますと、石平さんは1962年、中国四川省成都生まれ、北京大学哲学部を卒業後、四川大学哲学部講師を経て、1988年に来日、1995年、神戸大学大学院博士課程を修了されました。2007年には日本に帰化されました。中国や日中関係について精力的に講演活動や執筆活動をされている方です。
私の知っている中国人は全員いい人ばかりで、とても仲よくおつき合いさせて頂いておりますが、ニュースなどを見ると理解しがたい事もよく起こっています。
この本は帰化した石さんならではの視点で解説してあり、大変興味深く読むことができました。
石さんが引用されていますが、有名なルース・ベネディクトの『菊と刀』によれば、欧米人はキリスト教にもとづいた「罪」の意識で道徳倫理を守るのに対して、日本人は共同体の中で人に迷惑をかけてはいけないという「恥」の意識で道徳倫理を守るといわれています。
この枠組みで言うならば、中国人は自己の利益を重視する「利」の意識で道徳倫理を守るのだ、と石さんはいいます。
2006年、南京市内のバス停留所で、倒れていた老女を若者が助けたという事件があったそうです。
このとき老女は助けてもらったにも関わらず、その若者に対して「私を押し倒したのはお前だ。責任をとれ!」と言いだして、その若者を相手に訴訟を起こしたのだそうです。
この事件は中国ではとても有名になったそうで、中国ではこれをきっかけに老人が倒れていても知らんぷりをするようになってしまったのだそうです。
人の親切を悪用して利益を得ようとする老女もひどいが、その話を聞いて「下手に助けたら損をするから」と、倒れている老人を見捨てる中国人も徹底している。「良心」とか「恩を感じる」ということは、どうでもいい世界になっている。
『中国人の正体』より引用
後日、同じく南京市で、別の老人がバスから降りるときに転倒した事件がありました。そのとき、周りにいた人は誰も助けてくれませんでした。老人は叫んだそうです。
「間違いなく自分で倒れました。みなさんの責任ではないから、助けてください」
『中国人の正体』より引用
全く笑えない笑い話です。
「利」を中心に考えるとはどういうことか、具体例も豊富に解説されています。
中国のとる態度が分からないという方は、石さんの視点で中国人の立場に立ってみると分かりやすくなると思います。
どうぞご参考になさってください。
参考文献:『中国人の正体』 石平 (宝島社)
『菊と刀』 ルース・ベネディクト(著) 長谷川松冶(訳) (講談社学術文庫)
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