明日の経営管理者

米津仁志

2020年07月01日 10:00

 暑中お見舞い申し上げます。街や店舗にだんだんとにぎわいが戻ってきました。みなさまいかがお過ごしですか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、ドラッカーの『現代の経営(上)』「第8章 明日を予期するための手法」より引用します。

 今日の決定を明日の情勢に適応させ、理性的な推測を現実の成果に結びつけることができるのは、明日の経営管理者である。今日行った決定を明日の情勢に適応させることができるのは、今日の経営管理者ではなく明日の経営管理者である。
 経営管理者の育成に関しては、明日の決定を行うことができる経営管理者の育成を問題にしがちである。それも確かに正しい。しかし体系的な経営管理者の育成は、何よりも今日行った決定のフォローのために必要である。
 経営管理者の育成は、今日の決定が明日の頭痛の種となったときに、今日の決定とその背後の考えを理解し賢明な行動をとることのできる人たちを準備しておくという意味において必要である。
 つまるところ、事業のマネジメントは、いかに経営学が健全であり、いかに経済分析が慎重であり、いかに諸々の手法が優れていたとしても、常に人間的な要因になる。

        『現代の経営(上)』 p128-129より引用

 
 ドラッカーは、引用した文章の前段で、景気循環がいかなる段階にあろうと事業を発展させることのできるマネジメントの手法が必要であるいいつつ、それさえも将来にわたる決定は推測にすぎないと述べています。

 結局のところ、明日の経営管理者を育成するという、人間的な要因が最終的な鍵になるのです。

 経営管理者の育成のために、今日行った決定のフォローができる人、今日の決定とその背後の考えを理解し賢明な行動をとることのできる人たちを準備しておく、とあります。
 このことは、突如、優秀な人材を他社からヘッドハンティングしてきて、マネジメントを丸投げし、成果だけを見ようとする方式とは違うわけです。

 日本の中小企業は世襲制がほとんどです。子供の頃から親の働く姿を見て、やがて入社し、親と共に働いて、最終的に継承してく、という形です。その間に求められることは、テクニカルなことよりもむしろ人間的な成長です。世襲ではない企業においても、社内から同様な人材を育てることが重要であるということになります。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もどうぞよろしくお願いいたします。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

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