第一線の遺伝子

2021年08月01日

 残暑お見舞い申し上げます。みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでいます。私の興味のある部分を取り上げてご紹介しております。

 今回は「第12章 経営管理者は何をすべきか」の「経営管理者の権限」の節をご紹介します。
 
 マネジメントにおいては権限委譲という言葉をよく耳にしますが、ドラッカーはどう考えているのでしょうか。

 経営管理者の仕事は、その範囲と権限を可能なかぎり大きくしなければならない。すなわち、意思決定は可能なかぎり下の階層、可能なかぎりその意思決定が実行される現場に近いところで行わなければならない。これは、上からの権限の委譲という従来の考えとはまったく異なる。

               『現代の経営(上)』 p193より引用


 上に権限がありそれを下に降ろす、という考え方ではないですね。意思決定は出来る限り下の階層で行われるものである、というのがドラッカーの考えです。続きの部分を読んでみましょう。

 最も基本的なマネジメントの仕事を行うのは、第一線の現場管理者である。つまるところ、彼らの仕事がすべてを決定する。このように見るならば、上位の経営管理者の仕事はすべて派生的であり、第一線の現場管理者の仕事を助けるものにすぎないことになる。組織構造の観点からも、権限と責任は第一線に集中させなければならない。彼らにできないことだけが上位に委ねられる。第一線にこそ遺伝子がある。上の組織はすべて、この遺伝子によって規定される。

               『現代の経営(上)』 p194より引用


 原書では次のように表現されています。

 The managers on the firing line have the basic management jobs—the ones on whose performance everything else ultimately rests. Seen this way, the jobs of higher management are derivative, are, in the last analysis, aimed at helping the firing-line manager do his job. Viewed structurally and organically, it is the firing-line manager in whom all authority and responsibility center; only what he cannot do himself passes up to higher management. He is, so to speak, the gene of organization in which all higher organs are prefigured and out of which they are developed.

           "The Practice of Management" Peter.F.Drucker



 firing lijneとは最前線部隊=第一線のことです。本当に遺伝子(gene)という言葉が出てきましたね。当社でいえば、店舗でお客さまと接触しているサービスや調理をしているキッチンに遺伝子があり、上の組織はこの遺伝子により形作られ、発現させられるということになります。

 この節のまとめに、より具体的な文章がありました。

 経営管理者に与えられる決定権限については、一つの簡単なルールがある。GEの電灯事業部の経営憲章は、アメリカ合衆国憲法をもじって、「明確かつ成文をもって上位のマネジメントに留保されていない権限は、すべて下位のマネジメントに属する」と定めている。 これはまさに、市民の権利についてのプロシアの考え、「明文をもって許されていないことは、すべて禁ずる」とは逆の考え方である。仕事の範囲内において決定の権限が与えられていないことは、すべて細かく規定する必要がある。そのように規定されていないことについては、すべて権限と責任が与えられているものとみなさなければならない。

               『現代の経営(上)』 p195より引用


 店舗においては、そこに所属するマネジャーないし社員に、ある程度の権限が与えていなければ、お客さまへの対応は後手後手になり、まったく不十分なものになってしまうでしょう。店舗の社員をよく研修、教育し、より大きな権限を持てる状態にしておく必要があるわけです。そもそもfiring lineにgeneがあるわけですから、店舗に力を入れるのは当然のことであるわけです。
 
 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 末筆ながら、コロナ禍の早々の終息とみなさまのご多幸、ご健勝を祈念しております。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books

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