働く人の自由

2021年07月01日

 暑中お見舞い申し上げます。みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログではただいま、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでいます。私の興味のある部分を取り上げてご紹介しております。

 今回は「第11章 自己管理による目標管理」の「マネジメントの哲学」の節をご紹介します。
 
 今日必要とされているものは、一人ひとりの人の強みと責任を最大限に発揮させ、彼らのビジョンと行動に共通の方向性を与え、チームワークを発揮させるためのマネジメントの原理、すなわち一人ひとりの目標と全体の利益を調和させるためのマネジメントの原理である。
 これらのことを可能にする唯一のものが、自己管理による目標管理である。自己管理による目標管理だけが、全体の利益を一人ひとりの目標にすることができる。

               『現代の経営(上)』 p187より引用

 
 この部分を原書で見てみましょう。

 What the business enterprise needs is a principle of management that will give full scope to individual strength and responsibility, and at the same time give common direction of vision and effort, establish team work and harmonize the goals of the individual with the common weal.
 The only principle that can do this is management by objectives and self-control. It makes the common weal the aim of every manager.

           "The Practice of Management" Peter.F.Drucker


 現代は組織社会であります。ビジネスに関わるほとんどの人は何らかの組織に属しています。人々は、組織を通じてのみ、自分の能力を社会のために役立てることが出来るのです。このことは一人でビジネスをなさっている方々を否定したり評価したりするものではありません。現代においては、大多数の人々が組織に所属してビジネスを行うようになったという事実であります。

 この節のまとめの部分を読んでみましょう。

 自己管理による目標管理こそ、まさにマネジメントの「哲学」と呼ぶべきものである。この原理は、マネジメントのコンセプトそのものを基盤とし、マネジメントのニーズと障害についての分析からスタートしている。人の行動や動機づけについての洞察を基礎としている。企業の規模を問わず、あらゆるレベルのあらゆる人に適用することができる。それは、成果を確実なものにするために、客観的なニーズを一人ひとりの目標に変える。こうして真の自由を実現する。
 
               『現代の経営(上)』 p187-188より引用

 
 原書では次のように表現されています。

 But management by objectives and self-control may legitimately be called a “philosophy” of management. It rests on a concept of the job of management. It rests on an analysis of the specific needs of the management group and the obstacles it faces. It rests on a concept of human action, human behavior and human motivation. Finally, it applies to every manager, whatever his level and function, and to any business enterprise whether large or small. It insures performance by converting objective needs into personal goals. And this is genuine freedom, freedom under the law.

           "The Practice of Management" Peter.F.Drucker


 奴隷制度や労働争議を振り返るまでもなく、働く人と組織との関係は簡単に割り切れるものではありません。そこでドラッカーが考えたことは「自己管理による目標管理」でした。 これこそ”philosophy” of managementであり、concept of the job of managementであります。

 組織で働く人々に組織を通じて自己実現してもらうために「自己管理による目標管理」が生まれました。組織として成果を上げるために、自分の能力を使って、組織にどう貢献するかを自分で決めるのです。仕事は上司が決める、命令されたことだけを行えばいい、という仕事のやり方とは全く違う世界です。「マネジメント」は、働く人の人格をより大切にし、働く人に自由を与えられるようになったのです。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 末筆ながら、コロナ禍の早々の終息とみなさまのご多幸、ご健勝を祈念しております。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books

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