マネジャーの仕事は下でなく上に向かって行う

2021年04月01日

 春の日差しがうららかな季節を迎えました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』の「第11章 自己管理による目標管理」を読んでおります。興味のある部分を取り上げて、飛ばしながらご紹介しております。

 前回は「キャンペーンによるマネジメント」をご紹介いたしました。続きの部分を読んでみます。

 マネジメントとは、その定義づけからして、自らの率いる部門がその属する上位部門に対してなすべき貢献、つまるところ企業全体に対してなすべき貢献について責任をもつ者である。その仕事は、下ではなく上に向かって行われる。すなわち目標は、その属する上位部門の成功に対してなすべき貢献によって規定される。

               『現代の経営(上)』 p176より引用

 
 この部分を原書で見てみましょう。

 By definition, a manager is responsible for the contribution that his component makes to the larger unit above him and eventually to the enterprise. His performance aims upward rather than downward. This means that the goals of each manager’s job must be defined by the contribution he has to make to the success of the larger unit of which he is a part.

           "The Practice of Management" Peter.F.Drucker


 マネジメント(=マネジャー)とは、部下の行動を管理したり、部下の目標達成に寄与する者というイメージがあるかもしれません。しかし、ドラッカーはその概念を”aims upward rather than downward”と明確に否定します。
 自部署よりも上位部門の成功に対して責任を負うのがマネジメントであると指摘しています。
 
 続きを読んでみましょう。

 目標は、好みではなく、組織の客観的なニーズによって設定しなければならない。まさにそれゆえに、誰もが自らの属する上位部門の目標の設定について積極的に参画しなければならない。「事業全体の究極の目標は何であるか」を知り、その内容を理解しなければならない。そして「自らに何が求められ、それはいかなる理由でか」「自らの成果は、何によって、いかに評価されるか」を知り、理解しなければならない。

               『現代の経営(上)』 p177より引用

 
 原書では次のように表現されています。

 Precisely because his aims should reflect the objective needs of the business, rather than merely what the individual manager wants, he must commit himself to them with a positive act of assent. He must know and understand the ultimate business goals, what is expected of him and why, what he will be measured against and how.

       "The Practice of Management" Peter.F.Drucker


 
 上位の部門や企業全体に対しての貢献が求められている以上、自部署の目標は、企業の目指している大きな目標から導かれなくてはならないのです。

 自らの仕事でお客さまに喜んで頂いた、ということは大変尊い経験で、それを積み重ねていくことにより人は成長していくと思います。しかし、そのことだけで満足してしまっては、組織という視点が抜け落ちています。

 飲食店には、接客が好きだという従業員は多いです。自分の接客でお客さまに喜んで頂いている、という実感があることでしょう。
 そのうえで、自分の仕事がお店の経営にどのように寄与しているだろう?という視点をもっているでしょうか?

 自部署の目標達成で満足してしまうマネジャーは企業全体のことを考えていません。隣の部署と競争しているのだとしたら、向きが間違っています。我が部署は企業全体から見て何を求められているのか、どう行動すべきか、という全体観が必要です。

 ”must know and understand the ultimate business goals”の部分ですが、この企業が何を目指しているのか?という視点から目標を設定し、行動するようになると、マネジャーはさらに大きな力を発揮できるようになるでしょう。
 奮闘している一人の従業員の成果よりも、より多くのお客さまに、より大きなご満足を、組織として提供して差し上げられるようになります。

 今回の内容はドラッカーの本には繰り返し出てきますが、それだけ重要なことだからだと思います。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。みなさまのご多幸、ご健勝を祈念しております。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books

 米津仁志 at 10:00  | ささやタイムズ記事

お知らせ
米津仁志
 ささや株式会社の社長のビジネス読書ブログです。
 
さらに詳しいプロフィールはこちらからご覧ください
ささや
長野県上田市 法事・法要・会席料理 信州上田ささや
< 2024年04月 >
S M T W T F S
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8