専門性と全体観

2021年02月01日

 寒中お見舞い申し上げます。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 コロナ禍に明け暮れて一年が経ってしまいました。当社は依然、大変厳しい状況に直面しており、このまま何もしなければ、お客さまから不要の存在となってしまうことでしょう。私自身の力不足を反省しつつ、あきらめずに前へ向かってまいります。

 さて、ドラッカーの『現代の経営(上)』の「第11章 自己管理による目標管理」を読んでおります。

 前回は、個人の目標を組織の目標に合わせなければ組織の成果は上がらない、という内容をご紹介いたしました。続きの部分を読んでみます。

 機能別部門の経営管理者がもつ専門的な能力における追求心は、企業全体の目標とのバランスが失われるならば、強力な遠心力となって組織を分解させる方向に働く。それぞれがそれぞれの分野にしか関心をもたず、それぞれの分野を聖域として守ろうとする。事業全体を築こうとせず、領土の拡大に熱心な機能別部門の緩やかな連邦をつくろうとする。
 この危険は、今日進行しつつある技術の変化によってさらに大きくなる。組織に働く知識労働者の数は、今後大きく増加していかざるをえない。彼らに要求される能力の水準も高まらざるをえない。したがって、機能それ自体を目的にする傾向はさらに顕著となる。

               『現代の経営(上)』 p169より引用

 
 この部分を原書で見てみましょう。

 The functional manager’s legitimate desire for workmanship becomes, unless counterbalanced, a centrifugal force which tears the enterprise apart and converts it into a loose confederation of functional empires, each concerned only with its own craft, each jealously guarding its own “secrets,” each bent on enlarging its own domain rather than on building the business. This danger will be greatly intensified by the technological changes now under way. The number of highly educated specialists working in the business enterprise is bound to increase tremendously. And so will the level of workmanship demanded of these specialists. The tendency to make the craft or function an end in itself will therefore be even more marked than it is today.

       "The Practice of Management" Peter.F.Drucker


 この本が書かれたのは1954年ですが、いまではさらに仕事の専門性が高くなっています。仕事が分業化され、それぞれの専門性が高まれば高まるほど、自分の仕事のことだけを考えてしまう恐れがあり、その機能を目的化してしまう恐れが出てくるのです。

 製造は作ることだけを、営業は売ることだけを、総務は型にはめることを求め、それが達成されることだけに喜びを感じるようになってしまいます。各部署は自分の利益や利権を守るために他部署と戦うことになります。これでは企業の目標の達成は置いてけぼりになってしまいます。
 
 コロナ禍でテレワークが進み、ジョブ型採用も注目されていますが、この流れによって、さらに専門性が求められるようになり、結果しか見ないようなマネジメントを生み出すようなことになるかもしれません。いまは全体観のある経営者、マネジャーが求められているのではないでしょうか。

 なお、訳書で引用した部分に「知識労働者」という言葉が出てきますが、原書はspecialistsの表記です。「知識労働者」(=knowledge worker)という言葉は、一般的にはドラッカーの『断絶の時代』(1968年)から登場すると言われています。knowledge workerでしたら、知識労働者と訳してもいいですが、ここは文脈からしても、また平仄を合わせるためにも「専門家」と訳したほうがよかったのかもしれません。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。時節柄ご自愛くださいませ。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books

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