ワンマン経営と秘密警察

2020年09月01日

 さわやかな秋晴れの季節となりました。みなさまいかがお過ごしですか。日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、ドラッカーの『現代の経営(上)』「第10章 フォード物語」から、フォードの失敗について考えてみます。

 1920年代の初め、フォードの市場シェアは2/3でした。しかし、その15年後には、シェアは1/5まで落ちてしまいました。フォードの深刻さは、当時デトロイトでささやかれていたある救済計画にうかがうことができます。業界4位で企業規模がフォードの1/6以下というスチュードベイカー社に公的資金を導入し、フォードをフォード家から買収させるという計画でした。もしも、この方法が取れなければ、フォードの崩壊がアメリカ経済や国家に影響を与えないよう、国有化するしかない、と考えられていたそうです。フォードはなぜ失敗したのでしょうか?
             
 ヘンリー・フォードの失敗の原因は、一〇億ドル規模の巨大企業を経営管理者抜きにマネジメントしようとしたところにあった。彼はその秘密警察のおかげで、他の役員が行おうとする決定をすべて知ることができた。マネジメント上の権限や能力や責任をもつようになった役員は、ただちにクビにした。しかも、社内の秘密警察長官ハリー・ベネットが絶対的な権力をもつようにいたったのは、老人の完全な僕となり、しかもマネジメント上の経験や能力をまったく欠いていたからだった。
 何者にもマネジメントの一員たることを許さないという彼の方針は、フォード創立の頃からのものだった。例えば、当時すでに彼は、現場管理者が増長して、今日の地位にあるのは彼のおかげであることを忘れないよう、何年かに一度は意図的に降格させた。(中略)
 フォードの役員は、彼のいうままに動く助手でなければならなかった。業務を執行するだけであって、マネジメントすることは許されなかった。

               『現代の経営(上)』 p156-157より引用

 
 フォードの独断的なワンマン経営と秘密警察による人事管理は、究極の状態にまでいってしまっていたのです。戦前の話とはいえ、これでは優秀な人は離れていってしまうでしょう。
 社長は企業の全責任を負うわけですから、ワンマンで決断しなくてはならない一面があることは確かです。その意味で、企業は民主主義とは言えません。しかし、それは社員の衆知を集め、能力を発揮してもらったうえでの独裁であります。社長が個人的に好きなようにできるという意味ではありません。
 マネジャー(ミドルマネジメント)にとっても、同様であります。部長や課長という立場の人は気をつけなくてはなりません。部下は決して上司の奴隷ではないのです。地位が高いことは仕事の機能であると理解することが大切で、人間的に偉いことでありません。自分の行動を常に反省する態度でありたいと思います。

 コロナ禍の先行きはいまだにはっきりしませんが、この災いとの戦いは人類が必ず勝利する、と信じて日々の仕事に向き合っております。いつもご利用ありがとうございます。今月もどうぞよろしくお願いいたします。

  


 参考文献:
 『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
 

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