肌寒い日が続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
さて、今年はヨーロッパや中国で自動車のEV化に関する戦略が次々と打ち出されました。日本にとって自動車製造業は大変重要な産業です。我が国の自動車メーカーの戦略は大丈夫なのだろうか、と少し心配になりました。外部環境の変化は突然発生し、企業の経営に大きな影響を及ぼします。
突然やってくる危機について、ドラッカーは次のように述べています。
最近よく聞く話として、つい昨日まで順風満帆だった大会社が、突然、問題と危機に直面し、低迷し挫折する。
(中略)
原因はマネジメントの方法が下手だからではない。マネジメントに失敗したためでもない。たいていは事業を正しく行っている。単に実を結びえないことを行っているにすぎない。その原因はなにか。
それは、組織の設立とその後の経営に際して基礎とした前提が、現実に合わなくなったためである。組織の行動を規定し、何を行い、何を行わないかを決め、何を意味ある成果とするかを規定すべき前提が、時代遅れとなったためである。第一に、環境としての市場である。すなわち顧客や競争相手の価値観と行動である。第二に、自らの使命、目的である。第三が、自らの強みと弱みである。これらのものが、私が事業の定義とよぶものを構成する。
『P.F.ドラッカー 経営論集』 p154
事業の定義が陳腐化し、実効性を失ったとき、企業は危機を迎えるのです。これを防ぐため、ドラッカーは二つの方策を示しています。
第一の予防策は、私の言うところの体系的廃棄である。三年おきに、すべての製品、サービス、流通チャンネル、方針を根本的に見直すことである。
(中略)
第二の予防策は、外で起こっていること、とくにまだ顧客になっていない人たちについて知ることである。
『P.F.ドラッカー 経営論集』 p166-167
体系的廃棄も、ノンカスタマーに尋ねることも、いずれも難しい仕事ではありません。目標を決めて淡々と執行していくことです。
われわれは組織を蘇生させようとするとき、魔法の力をもつ人を探す。だが、事業の定義を見直すには、ジンギスカンやダヴィンチが必要なわけではない。
必要なのは天才ではない。勤勉さである。問題意識である。そもそもCEOとはそのための存在である。
『P.F.ドラッカー 経営論集』 p172
奇跡に頼っていては経営はできません。経営者はお金のまわっているときにこそ、勤勉に働き、秘められた問題点を見つけていくことが求められています。
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参考文献:
『P.F.ドラッカー経営論集』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
米津仁志 at 10:00
| ささやタイムズ記事